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若さは金になる 女がフーゾクに就職する論理

知って驚く「昼と夜は別の顔」。プロと素人の境界もよく分からない。疎外された 女たちの逆襲が始まった。



「若い女であることは価値があるんだから、有効に使わなくちゃだめじゃない!」

水 割り三杯と日本酒二合を飲んで、女はしたたかに酔っていた。勢いで、内証にしてい たテレクラでの「バイト」の話を友人相手に始めたのだ。

たしなめる友人に、彼女は 逆に食ってかかった。

そのバイトはこんな内容だ。雑居ビルにある事務所へ行き、ど こか別の「店」にいる男とテレビ電話で話す。それだけで昼間で一時間二千円、夜だ と五千円になった。「延長」させると時給が千円プラスになるので、時には乳房を見 せたり、オナニーの声を聞かせたりして男を引きとめた。

「バカな男を利用してカネ をもうけたかったから」

「延長」してほしいばかりにデートの約束をしては、すっぽ かす。もう五十回くらいにもなる。女は20歳。上智大学の学生だ。会社員の父親は 裕福で、クレジットカードを自由に使える。それでも「親に頼りたくない」とテレク ラで稼いでいる。そのカネで欧州へ行ったこともある。

「SMとソープランド以外は全部や った」

昼間イメクラで働くリカ(19)は、そう豪語した。夜は「出張性感マッサー ジ」をしている。体が小さく華奢なので、ロリコンもののAVにも何本か出演した。

この業界に入る前は、高校を中退してパチンコ店で働いていた。都内に住む両親は、 娘の仕事を知っている。が、「やめろとは言えない」のだそうだ。

腕に金色のロレッ クスが光っている。ダイヤがちりばめられた百万円はする代物だ。渋谷区内のマンシ ョンに一人暮らし。パチンコと競馬に熱中しているが、使うのは一日二万円までに決 めている。

「結婚? 考えたことはありますよ。でも、私は男に頼らなくても生きて いけるタイプみたい」

彼女が働く店では、月百万円稼ぐ人がたくさんいる。聞いてい たスーツ姿の店長が嘆いた。

「オレなんか月給25万円の固定給。オレも女になり たい」

別のイメクラで働くしずか(19)の本職は、看護婦である。勤務の合間に、 多い時は一日十数人の客を「抜く」。歩合制で一人六千円、月収百五十万円。看護婦 の月収を二日で稼ぐ。

SMクラブで「女王様」として働くつゆか(20)は、五百万 円を貯金してコンピューターの専門学校へ行くのが目標だ。将来は情報処理を職業に したいと考えている。

「私は、自分のやりたいことしかしたくない。けど、親は頼れ ないから」

このSMクラブの店長によると、彼女たちは海外旅行の行く先も、アマゾ ンやニューギニア、チベットなど半端じゃない。チベット仏教の研究に凝っている人。 日本語より英語の方がうまい人。

「93年暮れごろから一日に五、六人の就職希望者 が押し寄せて困りました。SMクラブというと『カッコいい仕事』らしいんですよ。 就職難のせいでしょうか。いやー、ホントに価値観が変わりました」

この業界15年 の店長氏も驚きを隠さない。

乱交売春クラブで働くゆか(21)が、こんなことを言 っていた。

「OLやってる私の友達なんて、上司のセクハラで毎日泣いてる。どうせ コピーとお茶くみに使われて三年で肩たたきされるんなら、この仕事の方がいいよ」

確かに、日本社会の主流である大企業の終身雇用制度からは、彼女たちは疎外されて いる。

79年から11年間日本に住んでセッ クス産業を観察し『ピンク・サムライ』を書いた英国人ジャーナリストのニコラス・ バーノフ氏は、こう言う。

「日本の女性は、大企業でキャリアをつかむチャンスから 疎外された、社会のアウトサイダー。なのに『結婚適齢期』とか義務だけは押し付け られている」

深夜番組「トゥナイト」で15年間性産業の最前線を歩き続けた映画監 督の山本晋也氏は、次のように指摘する。

「テレビはガキ女ばかり。どの週刊誌を開 いても若い女の裸ばっかり。女たちは、若いことがカネを生むことを肌で知っている」

かつて、奇抜な性産業を目の当たりにした時に決まり文句として使っていた「ほとん どビョーキ」が完全に死語になった。セックスに関する正常と異常、素人とプロの境 界が曖昧になったからだ。が、山本氏は彼女たちを責めない。

「この経済大国には拝 金主義以外に宗教も哲学もない。若者が拝金主義に走るのは当たり前だ。むしろ彼女 らは犠牲者じゃないか」

(AERA 95.2.27)





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