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[パチンコ業界]
カード導入の警察庁責任者・平沢勝栄氏は今では衆議院議員
パチンコカード導入を先導したのが、当時警察庁保安課長だった平沢氏だ。今では衆議院議員に当選。後に残ったパチンコカードは偽造で火だるま、パチンコ業界は瀕死の不況。誰も責任を取らない日本の官僚制の不思議。


金屏風を背に、男がマイクを握りしめている。胸には大きな大きな白い花のリボン。前には四千人のパーティー客。かん高い早口が絶叫調になり、荒い息がマイクに当たってボコボコ音を立てた。

「喧嘩別れした女房でも夜逃げした旦那でも紹介してほしい」
「一肌(脱ぐ)と言わずストリップになって応援してください」

この人、平沢勝栄氏50という。パチンコ業界にプリペイドカード(PC)が導入された当時の警察庁保安課長、つまり所管官庁の担当責任者だった。自民党公認の衆議院議員候補。それが平沢氏の現在の姿だ。(97年2月の総選挙で当選)

冒頭は、五月二十八日夜、都内の高級ホテルでの風景だ。よほどの重要候補らしい。「平沢勝栄君を育てる会」なるこの集まりに、自民党の主要人物が顔を揃えていた。中曽根康弘元首相。加藤紘一幹事長。後藤田正晴元副総理。小渕恵三氏。三塚博氏、などなど。

八十年代後半、平沢氏はPC導入の中心人物の一人だった。当時、パチンコ業界がPC導入に猛反対していたことについて、氏は警察庁保安課長として八十八年十二月放送のテレビ番組に登場、次のように語っている。

「(反対決議なんて)バカなことをやって、一般国民の立場からは噴飯ものです。国民のサポートが有ればこそこの業界は成り立っているのに、何を考えているのか」 偽造カードの発生についてはあまり思いが至らなかったようだ。同じ番組でこう言っている。
「(PCは)メリットだらけですよ。デメリットてのはまずない」
「法律に違反してなければ警察を何も恐れることはない。悪い事している人にとっては警察ほど恐い所はない。そういう事じゃないですか」(八九年八月放送) これは景品の現金化が公然の秘密となっているパチンコ業界の泣き所を突いた発言だ。

平沢氏の方針は、全警察の方針になった。その後、全国の警察署レベルで、カード型パチンコ台の導入を店側に働きかける現象が見られた(アエラ六月二十四日号)。

また、氏が道を開いたPCでは、三菱商事、住友商事、三井物産、NTTデータ通信などがそれぞれ出資したPC運営会社が三社誕生。関東、四国、近畿などの管区警察局庁を勤めた警察庁幹部OB(つまり同氏にとっては先輩)複数がそこに再就職している。これも、これまでアエラが報じた通りだ(九四年十月三日号など)。

それでは、自分が導入を進めたPCがいま六百三十億円の偽造被害を出していることについて、平沢氏はどう考えているのか。氏は、六月十五日に選挙区内の事務所でインタビューに応じた。インタビューは二回。一回目は同氏が「匿名」に固執したため、実名を条件にやり直したインタビューが今回掲載する分だ。

一言で言うと、同氏は強気の発言を繰返した。@PCはまだ失敗ではないA被害が六百三十億円という規模に広がったの警察やカード会社の対応が遅れたためB被害は一部のパチンコ店が偽造カード使用に加担したため。

当時、警察側の責任者として今日の大規模なカード偽造は予見できなかったのか。
「その質問に直接答えているかどうか別として、最近行政も会社も業界も対策をいろんな形で取っている。そしたら被害がほとんどゼロに近くなっている。なぜもっと早く、火事で言えばボヤの段階で消し止められなかったんだろう、と。私の感じではね」

「(PCは)ますます必要性が出てきたと思う。経理も明らかになったし、売り上げもガラス張り透明化してきた。国税当局もいろんな意味で助かっているだろう」

「私はこの業界は玉石混淆、と言ってずいぶん叩かれたが、間違いはなかった。今回の騒ぎを見ていると、店ぐるみ加担している。一部ですがね。それが被害のかなりの部分を占める」

対応策と言うと技術面か?
「全部含めてですよ。カードそのものが失敗と書いている雑誌があるが、冗談じゃない。カードの功罪の功は誰も書かない。泥棒が入ったら家を建てたのが悪い、というようなものだ」

大手パチンコ店経営者が「平沢課長に(景品の)『換金の合法化を考えてもいい』」と言われて業界を説得に回った、と雑誌上で発言している。
「それはウソだ。換金の合法化じゃなくて、インとアウトをクリアにしないとこの業界の社会的認知はありませんよ、と言った。(PCは)インの部分を健全化するにすぎない。この業界が今なお日陰産業なのは、アウトの部分が限りなくクロに近い灰色だからだ」

アウトをクリアに、とは?
「今の換金は必ずしも、何と言ったらいいのか、まあ、きちんと社会的に認知された形に(換金を)持っていくということだ」

あなたがPC導入に中心的な役割をしたのは間違いないですね?。
「(カード)会社続いてんでしょう?つぶれたの?やってんの?やってるってことは失敗じゃないですよ。会社として失敗ってことはつぶれているってことですよ」
「ただ、一部不正に使われた金が暴力団とかいろいろなところに使われたことは皆さん担当者は謙虚に反省すべきだと思います。ぜひ書いてもらいたいのは、カード会社も行政当局も、カードをやった精神、なぜ当時私がこれをやったのかという精神をよく理解して今後ともやってもらいたいということだ。これが一番大事だ」

PC導入当時からテレホンカード偽造が社会問題化していた。PCのように換金性の高いカードにはキャッシュカード並のセキュリティが必要だったのでは?
「そんなことはNTTに聞いてくださいよ」

平沢氏は東大法学部を卒業、六八年に警察庁に入り、二十八年近くをキャリア官僚として過ごした。政界との接点は早くからあった。故安倍晋太郎氏の息子晋三氏(衆議院議員)が小学生のころの家庭教師だった。八五年四月、当時の中曽根内閣の後藤田官房長官の秘書官になった。PC導入に関わるのは、約二年後に警察庁に戻って保安課長に就いた時代である。その後岡山県警本部長を経て防衛庁審議官を最後に昨年十二月に官僚を辞し、同月十三日には、自民党公認候補として追加内定を受けた。

東京東部の十七区で平沢氏は、旧公明党系の現職新進党議員・山口那津男氏に挑戦する形になる。平沢氏本人の言葉を借りれば「全国でも最も厳しい選挙区」だ。都内他区から選挙区内に住所を移した同氏は、再び本人によれば「郵便配達なみの地元をはいつくばる活動」をしている。

同氏は微妙な部分はオンレコでの話を拒み、自分でこちらのテープレコーダーのスイッチを切ることさえあった。写真撮影も拒否。抗議したら秘書に腕を捕まれつまみ出されそうになった。事務所には「昔警視庁にいた」という男性もいたから、氏の警察人脈は活用されているようだ。

(AERA 96.07.01)





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