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[パチンコ業界] パチンコカードは偽造横行で火だるま状態 警察庁が強引に導入したパチンコプリペイドカード。技術的な盲点のため、偽造が横行して630億円が闇勢力に渡ってしまった。「悪徳パチンコ店と外国人犯罪者のせい」。警察当局はそう言うが、導入した自分の責任はどうなるのか。 |
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「偽造プリペイドカードが見たい?そんなもの、腐るほどあるよ」 そう言うと、店長28は厚さ三ほどの青いカード束を机に置いた。車の中にまだたくさんある、という。偽造カード使用を見つかった客が、逃げる途中で捨てていったものだ。パンチ穴を塞ぐ代わりに、二枚の使用済みカードを切ってテープで張り合わせ、さらに磁気データを書き換えてある。見かけは驚くほど幼稚だが、これが金に化ける。 彼は東京郊外の私鉄駅前にあるパチンコ店の店長だ。四月中旬、勤め帰りの客で店が込み合う夕方六時ごろ異変は起こった。店内にあるプリペイドカード専用台五十六台から一斉に、玉を出すピーピーという音が鳴り響いてきたのだ。異様な音に慌てて駆けつけると、座っている客はまったく玉を打たず、ひたすら玉を出し受け皿に溜めている。話しかけても、誰一人日本語を解さない。訛りや風貌から、中国系外国人らしい。 偽造カード犯と直感、駅前の交番へ行こうと店を飛び出すと、店の前に二、三十人やはり中国系らしい集団が行列を作っていた。駅のホームにも四、五十人似た連中がたむろしている。頭がくらくらした。 制服警官が駆けつけると、カードを正規カードに変える。現行犯ではないので、逮捕は無理。結局、偽造の一万円プリペイドカードを使ってさんざん玉だけ出し、景品交換所で現金に換えて去った。一万円分の玉全部を現金化したとすると、手にするのは六千二百五十円。一枚百円で流通している偽造カードが現金に化けた瞬間だ。 予兆はあった。その二週間ほど前から、店内で偽造カードを使った中国系や中近東系外国人が毎日のように現れた。多いときで一日十人。しかも次第に人数が増えた。全員が偽造の一万円カードを十枚前後持つ。駅前で、携帯電話を手にした男が厚さ十分の一万円カードを手に十人ほどの客に売っているのを見て、仰天したこともあった。どうやら、偽造カードに手を焼いたカード会社が一万・五千円券の使用停止を決めたための「駆け込み使用組」だったらしい。 警察に突き出したのは最初の一回だけだ。警察で調書を取るのに四時間もかかり、仕事にならないことが分かったからだ。偽造カードを没収し、顔をポラロイドに撮って追い返す。が、今でも一日三、四枚は偽造カードが出てくる。 「元はと言えば、パチンコカードは警察が作って強引に導入したものじゃないですか。こんなことになって、警察の偉いさんたちはどうするつもりなのか」 この店長氏が遭ったような組織的な偽造パチンコプリペイドカード(PC)被害は全国で起きている。昨年の検挙数は六百六事件・六百九十三人。それが今年は三月までだけで五百六十五件・六百六十六人に激増した(警察庁調べ)。その損害額は莫大だ。五月二十一日の商社の決算発表によると、三菱商事が親会社の日本レジャーカードシステム(LEC)が年間五百五十億円、住友商事系の日本ゲーム・カードが八十億円。 店長氏が言うように、パチンコ業界へのPC導入が警察庁主導だったことは、今では当事者も認めている。例えば、東日本のPCを独占するLECの経営陣は、警察庁、三菱商事、NTTデータ社の出身者でほぼ固められている(別表参照)。その設立の経緯について、PC導入にかかわった元警察庁幹部は次のように話す。
三菱を誘ったのはあなたか?
また、パチンコ業界大手である松岡商事の松岡英吉社長は、当時PC導入に猛反対していた業界を説得して回った理由について、次のように発言している。 この警察庁保安課は、パチンコ業界を受け持つセクション。前出の元幹部の言葉を借りると「業界の生命与奪権を持つ」監督官庁だ。平沢課長は、八八年七月に当時の業界団体・全国遊技業協同組合連合会の首脳を同庁に呼び、近く設立されるカード会社への出資を求めてもいる。 当時警察庁が掲げた「パチンコ業界健全化」は@脱税防止A暴力団排除B不正改造台の追放、の三本柱だった。PC導入は特に@に効果あり、と喧伝された。パチンコ店でのPC使用度数をカード会社がコンピュータで管理することで、店の経理が表に出るからだ。こうして、PC導入促進の方針は全国の都道府県警の警察署レベルにまで徹底されたようだ。 千葉、神奈川、東京でパチンコ店を経営する伊隆道さん53は、新規開店や台の入れ換えなどで警察署に出向くたびに、どの土地のどの署でも判で押したように担当官がカード機導入を暗に勧めることに気が付いた。
例えば、神奈川県のある署で。担当官に書類を渡すと、まず一言。 パチンコ店は、風適法の厳しい規制を受ける。新規開店や台の入れ替えはもちろん、照明の取り替えまで「軽微な構造変更」にあたるため、警察署への届け出、警官の立ち会い、承認が必要だ。承認が遅れて人件費や利子の払いが嵩めば、商売がたちまち苦しくなる。パチンコ店経営者にとってはそれが恐ろしい。
「同業者は多かれ少なかれ似た体験をしているが、警察が恐くて口を開けない。本気で妨害されたら、もう商売が立ち行かないからだ」 こうして三菱商事系のLECが設立され、PC事業が始まったのたのは、八八年。住友商事系の日本ゲームカードが続いたのは八九年だった。が、当時からパチンコカード偽造を心配する声はパチンコ業界からは強く出ていた。先発していたテレホンカードの偽造が、八〇年代後半にはすでに社会問題化していたからだ。 パチンコカードの技術上の生みの親はNTTだ。基本的には、テレカと同じくNTTが開発したプリペイドカードの技術が使われている。技術的に同種のテレカが偽造された以上、パチンコカードも偽造されうる、というのは自然な推論のはずだ。しかし、警察にも商社にも、技術的な検討を子細にした形跡はない。
「我々は寄り合い所帯ですから、技術的なことはNTTデータの技術を信用している。変造を懸念する声はあったが、大丈夫と技術屋さんが言えば信用するしかない」 テレホンカードは人目のない所で使うから偽造が発生する。PCは衆人環視の中だから大丈夫だ。複数の関係者の話をまとめると、当時そんな趣旨の説明がNTTから三菱や警察へ、そしてカード会社からパチンコ業界へされていたらしい。 しかし、これは最初から矛盾した話である。理由はこうだ。 現在のカードシステムでは、店頭の発券機で売られたカードの代金はそのまま店に入る。他店で売られたカードを客が持ち込んだ場合、コンピュータが記録した使用度数に応じてカード会社がパチンコ店に代金を振り込む。つまり、カードが偽造だろうと本物だろうと、使われた点数分だけ店は収入を得るわけだ。
「店にすれば、偽造カードが使われても懐はまったく痛まない」
そして、犯罪にはプロのはずの警察庁も、NTTの説明を鵜呑みにした。 こんな指摘もある。当時、警察サイドはPCを脱税防止のための決済システムとしてしか見ていなかった、とあるLEC関係者は話す。「脱税防止」に目を奪われるあまり、技術的なセキュリティにはあまり目が行かなかったようだ。 さらに、テレカと違ってパチンコカードは現金に換えられる、という点が置き去りにされた。いくらテレカを偽造しても電話をかけるのがせいぜいだが、パチンコカードを偽造して店で玉を出し、景品交換所に持っていけば現金になる。何のことはない、パチンコカードを導入して「偽札より簡単に偽造できるお金」をわざわざ用意してしまったのだ。 実は、現在のパチンコカードのシステムには致命的な欠陥があり、こうした換金性の強い金券には不向きなのだ。これは後述する。 六月二十五日にLEC社長に就任することが内定しているNTTデータ通信の立花祐介常務57は次のように話す。
テレカの偽造が問題化していたのに同じ技術でパチンコカードを始めたのはなぜですか。
パチンコ業界はまったく未知の分野だったのでは?
パチンコ店は衆人環視だから偽造は起こらない、というのは楽観的すぎましたね。
今後どんな改善策を? ちなみに、立花常務はパチンコは「学生時代にちょろちょろとやったくらい」で、カード機では打ったことがないそうだ。 カード偽造の背後に組織がいることはほぼ確実だ。が、日本の暴力団が利益を得ているのも間違いない。ある暴力団関係者からこんな話を聞いた。 偽造を手がけるグループに「打ち子」を斡旋している。パチンコ店へ行って偽造カードで玉を出す人間のことだ。土木作業員の人集めと要領は同じ。だいたい中近東系か中国系の外国人がほとんどだ。一人紹介すると一万円もらえる。おいしい商売だ。最近はほとんどこれで食っている。
「『警察がヤクザ育てるCR機』。仲間内ではそう言ってますよ」 (AERA 96.06.24) |
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