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オレンジ共済事件・友部達夫参議院議員は詐欺師だったのか?
うまい話には裏がある。バブル時代にさんざん懲りたはずなのに。政治家の後援組織が共済事業を行い、定期預金まで運営する。そんな怪しげな話に人々が乗ったのは低金利時代だからなのか。


「月五万か十万の小遣い稼ぎにいいなあ、と思ったから始めたんだ。代理店は十人中十人ともそうだと思うよ。友部(達夫・参議院議員)が議員になろうと乞食になろうと関係ないねえ。支持者?そんなヤツ一人もいないよ」

千葉県で「オレンジ共済組合」の代理店を営む男性45の言葉である。あなたは友部議員の支持者ですか、と問うと、彼は言葉を荒げて否定した。

代理店を始めて四年になる。掛け金や配当は本部と加入者が直接振り込みでやりとりするので、仕事は勧誘だけ。サラリーマンと兼業なので、暇な日に家を訪ね歩いてパンフレットを配った。百人くらいが加入。うち二、三十人が定期預金も申し込んだ。そもそも、自分が代理店に申し込んだのも、テレビのコマーシャルで募集を知ったからだ。自分も顧客も、友部議員の政治団体に入っているという認識は全くない、と断言する。

東京都のある区を受け持つ男性26の「代理店」は家に置かれた一台のファックスである。利殖情報誌で代理店募集を知った。定期の加入者は五百万円と七百万円の二人だけ。新聞の折り込みチラシを十万枚まいてつかんだ顧客だ。
「研修会にも行きましたが、政治とは関係のない事業という認識でした。議員を支援?ぜんぜん違いますよ。会ったこともないのに」

警察が出資法違反の嫌疑をかけている「貯蓄型オレンジスーパーファンド」は、友部議員の後援組織である「年金会」の互助組織「オレンジ共済組合」が運営している。つまり、法律上は「後援者の助け合い活動」の一つと見なされているのだ。法の許可を受けた銀行でも保険会社でもないオレンジ共済組合が、七%前後という高利息で定期預金を運営したり、病気や事故の時に保険金を支払う事業をできるのは、そのためだ。

しかし、会員以外の「不特定多数」を対象にこうした事業を行っていたなら「出資法」に違反する。
「九二年に代理店制度を全国に展開してから、限りなく出資法違反に近い状態になってしまった」
匿名を条件に取材に応じた内部関係者は、そう認める。この年、組合は「オレンジ年金企画」という別会社を設立、代理店整備をビジネスにした。顧客を獲得すれば定期預金の六-九%、共済掛け金の二〇-四〇パーセントが代理店に入る仕組みを作った。テレビや新聞広告を出す。勧誘のはがきを撒く。全国の代理店で出資法違反行為が頻発するようになったのは、それからだ。 「今まで黙認してきたのは『当局のおとがめがないからこれで良いのだろう』と考えていたため」

「国会議員」の信用を利用していたことは間違いない。
「こくみん共済やJA共済に続いて五番目に国の認可を受けた」
「財団法人格が間もなく認可される見通し」
そんなウソの情報が、加入希望者への説明会や郵送文書で盛んに流された。

強制捜査が近づいた今月一日に、本部で代理店主向けに説明会があった。友部議員は、資金は十分にあり、マスコミの騒ぎは誤報だ、と繰り返したあと、右手を胸の議員バッジに当ててこう言った。 「このバッジに賭けて、ご迷惑は絶対おかけしません」

だが、先の関係者によると、組合の運営は驚くほどいい加減だったようだ。まず、どんな資産運用で七%前後という高い利率を維持していたのか。友部夫妻ら少数の幹部を除いて、はっきり知る者がいない。

「利回りの良い運用先がある」
「投資顧問契約を結んで外国国債に投資した」
「サラ金にカネを貸している」
「中小企業に融資している」

友部議員本人の説明はこうだ。
「共済の掛け金は掛け捨てなので、その分を定期の運用に当てた」

組合幹部のピンハネもあったらしい。が、組合本部のM総務課長が「紹介」という形で加入者を押し込み、手数料の三分の二を自分の個人口座に振り込ませた。そう証言している代理店主がいる。

九月中旬、報道で問題が表面化したあと、友部夫妻ら組合幹部が集まって対策を協議した。いずれは税務当局の査察が入る、という話になったが、収支を加入者や代理店に公開するどころか、報告書を作ったこともない。資料は残っているのか、と一人が問うと「段ボール箱に詰めてある」。大急ぎで会計士を入れて集計したが、分かったのは収入だけで、正確な支出は結局分からないまま。領収書のない支出がかなりある、という。

「スーパー定期」で集めた金は五十億円前後と見られる。が、預金残高は常に千万から二千万円を推移していたらしい。

では、カネは一体どこに消えたのか。政治資金という可能性は高い。友部議員側は過去の参議院選挙の供託金に一億二千万円を共済組合から借りたことを認めている。だが、それだけだろうか。

八三年にミニ政党「年金党」を発足させた友部氏は、八六、八九、九二年と参議院選比例区に挑戦するも全敗。ところが九五年三月に突然年金党を解散、新進党の比例区候補者名簿に入り、昨年七月に悲願の初当選を果たす。

この時の名簿順位は三〇人中十三位と、上位ランクだった。比例区では有利な高い知名度を持つ元アナウンサーの畑恵参議院議員でさえ十六位だったから、無名の党外候補にしては厚遇である。

「新進党の選挙対策関係者からは『得体の知れない男だ』と反対論が出ていた。なのに、ある有力議員が強引に押し込んだ」
同党関係者はそう話す。何か強力な「引き」があったようだ。

奇妙なことに、政治資金規制法による自治省への収支報告書には、共済組合の活動はまったく記載されていない。「年金会」の九五年分(友部議員が当選した年)を見ると「収入」「支出」ともすべてゼロ。「資産状況」もすべて「無」と記されている。これだけでも、政治資金規制法に抵触する疑いが濃い(友部議員側は『私どもの手落ち』と認めている)。

オレンジ共済組合のネットワークは選挙では集票組織として利用される。昨年の参議院選挙の直前、ある代理店主は「支部長会議」の通知を受け取り、都内の高級ホテルへ出向いた。ところが、行ってみると、これが友部議員の選挙集会。細川護煕氏や海部俊樹氏ら新進党の大物代議士が顔を揃え、応援演説をぶった。予告がまったくなかった約八十人の同業者はすっかり当惑した、という。

(AERA 96.11.25)





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