![]() 渋谷の女性専用大人の玩具店「キュリウス」の風景。最近はこの手の店も珍しくなくなった |
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セックス産業ルポ・東京は世界一のセックス都市 トウキョウは今や世界一のセックス産業都市だ!これまで朝日系などジャーナリズムがまともに取り上げてこなかったセックス産業のルポ。この記事で海外のメディアの取材が殺到! |
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女たちはさっきから海外旅行の話ばかりしている。 バリ島行ったんだけどさあ、あっちのお祭り見逃しちゃった。バリの水着輸入しちゃおうかなあ。すっごくキレーなの。 女たちはどう見ても二十歳前後だ。昼間は何やってんの?「ん?ガクセーだよ」。八畳ほどのリビングルームのテーブルを囲んで、男五人と女三人が座っている。ピンクや黒のボディコン姿でおしゃべりに興じる女。どこかのラブホテルのお下がりらしい白いバスローブを来た男たちは、黙ったままテレビを見つめている。画面は「平成教育委員会」だった。 ここは、分かりやすくいうと「乱交売春クラブ」だ。三時間前、夕刊紙の三行広告から「大人のパーティー」「ビデオ鑑賞会」を適当に選んで、片っ端から電話した。男の声がした。 「料金は三万円でして、食べ放題、飲み放題。好きな女の子を選んで二時間で二人までと遊んでもらえます」 b本番ありですか。 「ま、そこは大人のつきあいってとこですね。××駅北口からお電話ください。道順教えますから」 指定された場所は、住宅街のこぎれいなマンションだった。テーブルに座る。仕切り役の女が、男に次々と声をかける。 「それじゃ××さん、そろそろ一回戦行きましょうか」 男は女を選び、隣室に消える。六畳ほどの和室に、布団が三組「川」の字に敷かれているのが見えた。仕切りは薄いカーテン一枚。間もなく暗がりの中から、獣のような男の唸り声と、すすり泣くような女の声が漏れてきた。 こんな調子で、多い時には二十人ほどの客を六人くらいの女が相手する、という。 舞台は東京・新宿に移る。JR駅前の乱雑な商店街を抜けた裏通りに、その建物はあった。 外見は、どこにでもある白いタイル張りの五階建てマンションだ。この建物が「SM(サド・マゾ)クラブ専用ビル」だとは、誰も気付いていないだろう。 その一室のドアを開ける。わが目を疑った。そこには、壮麗な大名屋敷の座敷が広がっていたのだ。掛け軸を背にした御座。絢爛たる打掛。桧の香りが漂うなか、白い襦絆に赤帯姿のなまめかしい女が三つ指をついて座っている。 見上げれば、壁には木製の張り付け台が。ここは、サド男がマゾ女を虐待するための和風クラブなのだ。その名も「雅」という。別室には、座敷牢まであった。 男たちは、五万円から十六万円を払って、女を縛って鞭打ち、蝋燭で炙り、はたまた浣腸を打って遊ぶ。これまでに一回に三十五万円使った人がいるという。 このSMビルが作られたのは、九〇年のこと。 「いま別のマンションを改装して、六十畳敷きの『別邸』を造っている最中でございます」 傍らのマネージャー氏43は言う。黒いスーツ姿の彼は、どこかのホテルマンのような物腰だ。 同じマンションに、四つのSMクラブが入居していて、三十七室のうち実に二十五室がSMクラブだ。部屋のドアを開けるごとに、そこは男性が化粧やドレスで女装するクラブだったり、黒革の「女王様」が男を鞭打つ部屋だったりする。建物全体で、十億円以上の改装費がかかっているそうだ。 傑作なことに、ここのSMクラブには「女王様」や「奴隷女」の労働組合があって、賃金などを決めている。高いハイヒールで足を捻挫した、腰を冷やしたなどの「労災」に補償もするし、家庭に不幸があれば見舞い金が出る。高級マンションの「寮」もあれば、二十四歳の「定年制」もある。 SMクラブは、いま都内におよそ百二十軒ある。この道十五年のマネージャー氏はそう言う。 「最近はSMクラブは下降線です。マスコミに出すぎて神秘性がなくなってしまった。お化け屋敷と同じで、見えないほど好奇心をかき立てられるものなのですが」 思いがけず、待合室の客がちらりと見えた。黄色いカーディガンを着た、銀縁眼鏡の男性。四十歳くらいだろうか。医者。弁護士。銀行員。警察官。コンピューター技術者。「知的な職業。スケベそうな匂いがしない」。それが、ここを訪れる男たちに共通した特徴だそうだ。 マネージャー氏は、赤いファイルを目の前に積み上げた。同じビル内のSMクラブが四年前に実施した顧客二千人のアンケート調査だ。大半は二十から三十代。はるばる秋田や山口から来る客もいる。六割強の客が、一回来たきりで、戻っては来ない。 「『チャンネル感覚』とでも言うんでしょうか。SMも女装も、ちょっと変わった刺激が欲しいと言ってはお越しになる」 テレビのチャンネルを変えるように、気分次第で様々なセックスを楽しむ。それが高じて隆盛を極めているセックス産業が「イメージ・クラブ」(イメクラ)だ。 東京・渋谷の繁華街のど真ん中。パチンコ店の二階にイメクラ「ファイブ・ドアーズ」はある。 ある部屋のドアを開けると、黄色い自動車がデンと鎮座していた。本物の車を、クレーンで運び上げた。カーセックスの気分で、店の女にフェラチオや手で射精させてもらえる、というわけだ。 吊り革と赤いシートの「電車プレイ」の部屋。看護婦姿の女にあちこち弄んでもらう「診察室」。かと思えば、ファックスやコピー機まで置いたオフィスの一室やら、女子寮の一室やら。痴漢やセクハラ行為を思う存分どうぞ、というわけだ。こんな部屋がビル内に七種類もある。 開店したのは九三年十月。多い日は一日に七十人の客が来る。昨年暮れに会員制を止めて料金を値下げしたら、客が三、四倍に急増したという。 「隣のビルに似た店がありましてね。『あっちの客を取ってこい』と社長に言われてるんです。話題性のある部屋を作って客を呼び込む作戦ですよ」 支配人25はそう話す。 渋谷、新宿や池袋などの繁華街はセックス産業が密集する激戦地だ。不況で産業全体のパイが成長しないいま、サービス内容で差をつけるしか生き残りの道はない。 昨年暮れに開店した池袋のイメクラ「ちかんクラブ」の店長26は、近くのイメクラを二十から三十軒回ってサービス内容を研究した。店の女と「どんなサービスが興奮するか」「シャワー室の足拭きマットが湿っていると不潔」などと研究する。まるで改善運動かTQC活動である。 どれだけこの手の店の種類が多いか、とにかく挙げてみよう。 おんぼろの木造アパートを借り上げ、浴衣姿の女性の寝込みを襲う「夜ばいプレイ」。妊婦を虐待するSMクラブ。汚物愛好者のために、女の糞尿を売る店。キックボクサーの格好をした女に殴ったり蹴ったりしてもらう、リングでプロレスの技をかけてもらう「格闘技プレイ」。ビルの一室に土俵があって、回し姿で女と相撲を取る「相撲プレイ」もあったが、さすがにこれはすぐ消えたらしい。 これら新興勢力に押され気味なのが、五十年近い歴史を持つ老舗セックス産業のソープランドである。全日本特殊浴場協会連合会の話では、年に二%ずつソープランドは減っている。東京・吉原でも、十年前は二百軒だったのが今では百五十軒ほどに減った。 「八〇年代、バブル経済の絶頂期あたりからソープは退潮。他のいろいろな風俗産業が出てきて、逆に遊びが貧しくなった」 三十年近くをソープランド専門記者として過ごし「トルコロジー」(晩聲社)の著書がある広岡敬一さん73はそう言って嘆く。 バブル経済全盛のころ、社用族がソープランドの値段を総額十万円にまで吊り上げた。バブル経済が終わったいまも、ソープランドの相場は東京で四、五万円のまま。客の多くは一回一万数千円のイメクラや性感マッサージに逃げた。セックス産業の世界でも「価格破壊」が進行中なのだ。 トーキョーは「世界一のセックス産業都市」を宣言していい。理由その一。性的快楽のためにはカネと工夫を惜しまない貪欲さ。ニューヨークにもロンドンにもパリにも売春婦はいるが、基本的にはベッドでセックスするだけである。 理由その二。高度に発達したセックス情報産業。売春婦のカタログ雑誌を書店やコンビニの店頭で堂々と売っている先進国というのは、おそらく日本だけだろう。女たちの写真に、店の電話番号、身長、BWHのスリーサイズ、果ては星座に血液型。だいたいどの雑誌も三百人分以上を並べる。 そのひとつ「夜遊び隊」。九〇年に八万部でスタート、一年半で隔月から毎月刊行に成長した。今では、東京だけでなく札幌や名古屋までカバーしている。ほとんどのページが上質紙のカラー印刷のため、月刊で七百三十円という高めの値段にもかかわらず、公称二十五万部を売る。 他にも「シティ・プレス」「ナイト・ウォーカー」など、風俗情報誌マーケットは五誌で実売五十万部を数える。「大人のおもちゃ屋」の隅にひっそり置かれていた粗悪な風俗情報誌は昔話だ。 「この業界はグルメガイドや中古車情報誌と同じで、女性を何人載せられるかが勝負です」 飯山信次編集長は言う。 「ところが、ここ一、二年イメクラや性感マッサージがスゴイ勢いで増えていて、とても載せきれない。新しい店は断っています」 「女性向け風俗産業求人誌」というのもある。 先発誌に「てぃんくる」がある。隔週刊で、二百五十円。九二年に創刊され、現在関東圏だけで公称五万部を売る。ソープランド、イメクラやピンクサロンなどの求人広告が毎号約六百件。後を追って、ライバル誌が二誌登場した。 広告部分を除くと、作りは明るい女性誌の趣だ。イラストや漫画を駆使した「風俗の仕事紹介コーナー」もある。 「風俗産業の汚い、怖い、暗いという3Kイメージを払拭してあげるためです」 チーフプロデューサーの中園亮司さんはそう話す。同誌の発売元は、一般企業のセールスプロモーション会社。つまり、セックス産業が儲かると見て「外部資本」が参入し始めたのである。 理由その三。男だけでなく女の性欲も全面解放だ。 東京・渋谷に「女性専用の大人のおもちゃの店」が開店したのは、九三年四月のことだ。「キュリウス」という。バイブレーター(張り形)が壁一面に並ぶ店内には、女性一人か、カップルでないと入れない。これが大繁盛。一年目で名古屋と大阪、二年目に広島と福岡に支店を出した。 「昨年一年で三万人のお客がありました。一日に百二十本ほどのバイブが売れます」 田中雅章社長はそう話す。 制服の高校生、子連れの主婦。客層は十代から八十代というから仰天した。 女性用のセックス雑誌、つまりエロ本もちゃんとある。月刊誌「綺麗」。公称十五万部を売る。 ここでも仰天した。「3P(三人セックス)体験」とか「同性愛体験」など、記事の七割が読者の投稿でできている、というのだ。グラビアでAV男優を相手に痴態を演じるヌード女性まで「読者参加」だというではないか。 「ウソじゃありません。我々が想像して書いてもつまらない。読者の手紙の方がすごいし、手間もカネもかからない」 山陰久志編集長は、読者からの手紙の束をどん、と置いた。一カ月に二百通来るという。 イラストや漫画、自分の写真を添えてくる人もいるそうだ。 「とにかく、性欲をダイレクトに表現することにかけては凄い。こっちが驚いています」 スタッフ六人は全員女性。読者から応募して編集部員になった人もいる。その一人、鶴見美紀子さん24は毅然と言う。 「セックスは男のためだけにあるんじゃない。二人でするもの。女の子がエッチでもいい。みんなこんな本を待ってたと思う」 セックス産業の隆盛には副産物がある。性病の流行である。 「性病予防法」でいう淋病、梅毒など四種類の「性病」だけではない。爆発的に広まっているのは、むしろ「性行為感染症」(STD)である。 「いまSTDは大流行どころではない。『コンドームをしていれば伝染しない』『フェラチオだけなら大丈夫』。これらはすべて迷信です」 新宿の歓楽街近くで四十年近く開業する「新宿東京医院」の増田豊さんはそう指摘する。 二十五年前、患者数は半年に百人程度だった。それが今は五百人近い。クラミジア、性器ヘルペス、毛じらみ。肝炎や結核も、セックスなしの性行為で伝染する。 クラミジアが口から感染すると、扁桃腺がはれて風邪に似た症状を起こす。自覚症状が軽いので、感染しているとは気付きにくい。 セックス産業で彼氏が感染する。彼女に移す。彼女が他の男と寝て移す。その男がまたセックス産業に移す。この悪循環を、増田さんは「山の手線感染」と呼ぶ。 一方で、家庭内のセックスは急速に衰えている。いわゆる「セックスレス・カップル」が急増しているのだ。 順天堂大学・浦安病院で阿部輝夫助教授が開くセックス・セラピーを訪れた「勃起障害」「性嫌悪症」などの性障害の相談例は、七十五件(九四年)。八五年の三倍以上に増えた。ほとんどが、本来ならセックス盛りの二十から三十代なのだ。 こんな性障害を起こす男性には、驚くほど共通点がある、と阿部助教授は指摘する。@医師、弁護士、銀行員など社会的地位は高い。半数以上が大卒A見合い結婚B学生時代に恋愛経験がない。 生育歴にも共通点がある。友人も本も決めてしまう過干渉の母親の下で育つ。「恥」ばかり押し付ける冷たい家庭。そして、なぜか人工哺乳。 アダルト・ビデオやエロ本には発情する。夫婦ともオナニーはする。なのに、セックスができない。 あるイメクラの店長がこんなことを言っていたのを思い出した。 「わざとパンティを脱がさずに、足首にひっかけておく。女性の顔に向けて射精する。パンストを破る。最近そんな趣味のお客さんが多いんですよ。みんなAVで覚えるみたいですね」 (AERA 95.2.27) |
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