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4人の女性を殺したタクシー運転手の心の底に広がる闇 街角で拾った女性を4人続けて殺したタクシー運転手が、広島にいた。挫折ばかりの人生で、最後は殺人に走った男の心の底に広がる闇は、底知れず深い。 |
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ストリップ小屋、キャバレー、ソープランド。広島市の「流川地区」は赤い壁の遊郭跡が今も残る歓楽街だ。夜、通りに群がる酔客をかき分けるように、白いタクシーはこのネオンの街へやって来た。
「若い娘、おる?」 そう言って朝四時か五時ごろ戻ってきては女性を選び、近くのホテルへ行く。そんなことが月に一、二回あった。タクシーを運転しているのに、男はいつも泥酔状態。シートに缶ビールが転がっていることもあった。客にならなくても毎夜のように冷やかしに来るので、この界隈では「タクシーの男」はよく知られた存在だった。 この男、日高広明容疑者34(以下呼称略)は、九月二十一日に殺人と死体遺棄の疑いで逮捕された。その後彼は、五ヶ月の間に四人の女性を殺害して死体を捨てたことを供述。犯行を時間順に並べるとこうなる(広島県警調べ)。
@四月十八日ごろ女子高校生(当時16)を殺害。五月六日に腐乱死体で発見。 事件の直前まで流川に住み、働いていたCの洋子さんにとっては、日高は数年来のなじみ客だった。藤山さんにも日高は数年来の「客」。@Aは初対面だったようだ。 手口はどの事件も似ている。市中心部の繁華街で女性を誘い、タクシーに乗せる。車中で絞殺、車を一、二時間走らせ郊外の山中の道路脇に投げ捨てる。逮捕されたのはCの容疑だが、調べるうちに他の三件も次々に供述。特に@は迷宮入り寸前で、Aに至っては事件にさえなっていなかった。 被害者から金を奪ってはいるが、合計しても十数万円程度。金目当てというより、諍いのうちに殺害、ついでに金も取った、という方が正確なようだ。が、なぜ四人も殺したのか動機ははっきりしない。 日高は高校時代までを宮崎市で過ごした。大学に入るが、三年で中退。郷里に戻るが、八六年に強盗容疑で逮捕された。二年ほど服役したのち、親類の紹介で八九年に広島市のタクシー会社に就職。新しい街で、再スタートを切った。四年前には結婚、娘も生まれた。妻の実家の援助で千八百万円の一戸建てを購入。娘と花火をしたり、プールで行水させる姿を、近所の人が見ている。 一方で日高は他人とのつながりを極端に避けていた。酒、ギャンブル、釣り、カラオケ。どんな話題にも黙っている。自分から人に話しかけることはない。同じ宮崎出身の同業者が日高の訛りに気付いて「宮崎の人かね」と訪ねても、決して故郷のことを語らなかった。この会社の車には無線機がない。日高は一人黙って車を走らせた。 上司によると、売り上げは「中の下」。溌剌としていたのは、タクシー会社の野球チームの試合の時だけだった。サードかショート。小中学校ではソフトボールの選手だった、と言っていた。
が、三年ほど前から日高は精神のバランスを失い始める。忘年会や新年会で酒が入ると、急に泣き出して周囲を驚かせた。 運転手の高齢化で会社の野球チームは解散。運転手のたまり場だった空港は三年前に市外に移転、日高はまた孤立を深めていった。運転手仲間が集まる食堂にも行かず、車の中で新聞を広げて弁当を食べる姿を同業者が目にしている。
「もう一人殺して捨てています。ご案内します」 逮捕と前後して、妻とは離婚。面会に訪れる人もない。郊外の山村に造成した宅地にある自宅に人気はなかった。箱のようなベージュ色の家の裏庭で、トマトとネギが立ち枯れていた。 (AERA 96.10.21) |
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