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■佐野元春 「ぼくは歌をおくるボヘミアン。ダイレクトにアート届けたい」

 



 僕はインターネットを地球市民のための「グラスネット」と呼んでいます。そう、グラスルーツ(草の根)のグラスです。


 デビュー二十周年を記念して、詩の朗読にグラフィックを付けたCD書籍「Spoken Words」をネットで受注販売する試みをやってみました。レコード会社は大衆向けのポップ作品は制作宣伝に力を入れますが、こういう亜流に位置する作品には消極的なんです。でも僕にとって詩は、歌と並ぶ重要な表現。ネットは、僕もレコード会社も損せずリスナーに作品を届けるチャンネルとして機能した。


 これまでのアートは受け手に届いた時点で死んでいた。曲を録音してCDを届けるにはどう急いでも一カ月はかかる。例えば、阪神大震災の時にネットがあれば、励ます歌をすぐに届けられたのにと思うんです。ネットによってリスナーにダイレクトに作品を届けることができるようになる。


 一方、デジタルコピーが横行するネットの世界でアーティストの権利をどう守るか、民主的な議論はまだ行われていない。秒速で飛んでいくような技術の進歩と、牛の歩みのような法務が驚くほどかけ離れているのが現状です。ナップスター訴訟が注目を集めた今こそ、僕はアーティスト側から議論を起こしたい。


 ただ、この問題もアーティスト個人の生活に関わることだからこそ声を上げているにすぎない。旗振り役をしたいのではない。僕が大学に入った頃はもう政治運動は終わり、キャンパスの立て看板や近くのカフェにムードが残っていただけだった。僕らの世代には団塊の世代のような制度に対する憎しみはないんですね。僕はただ、愛しい者に歌という物語を届けたいと願う風来坊であり、ボヘミアンであるだけなんです。

 

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さの・もとはる 44歳 ミュージシャン ボブ・ディランなど1960年代ロックとともにケルアックやサリンジャーの文学を愛する。85年には「ヤング・ブラッズ」が国際青年年テーマ曲となり、印税はアフリカ難民救済に。立教大学社会学部卒

(AERA 2001年01月01日)





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