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草野マサムネ インタビュー全文

 


烏賀陽:たしかスピッツって、150万枚売れたんでしたっけ。

草野:「ああ、なんかおかしいですね」

草野さん自身、ブリッジのインタビューでこれってなんか可笑しいな、みたいなこといってますよね。違和感ってあるんですか。

「違和感っていうか、ま、ブームったんだろうなって言う。過去形になってますけど、もう。やっぱそういう、うーん、上手く時代の流れに乗れた、ラッキーなバンドだったのかなってきもするし。もちろん、あの、何て言うか150万ていう大きな数字じゃなくて、もうちょっと、うん、10万20万ぐらいだったら、まあ、俺様の実力だって言えるのかもしれないけど。やっぱ100万枚ということになっちゃうともう、理解不能というか。人によってはアメリカのアーチストなんて1000万2000万売ってんだから、それに比べたら小さいもんだよ、という人もいるけど、とてもそんな気分になれなくて」

逆に、どうして自分の歌がこういう風に受け入れられるんだと思います?

「すごいね、そのへんはクールな見方をしてて。おそらくメロディがキャッチーだからとか。あと声とかも有るのかな、と。その時代に合った声というか。あとね、超音波系とよく言ってるんですけど。あの、過去にもたとえば、過去というとあれか。先輩にも、小田和正さんとか松任谷由実さんとか、ちょっと超音波系な。普通の地声とは違う声ですよね、歌うときの声が。地声なのかファルセットなのかわかんないぐらいの周波数がなっているような。たぶん、自分の声もそこに組みいれられるんじゃないかなと思っていて」

ちょっと甲高くて、いわゆるベルベットボイスみたいな奴ですかね。

「そうですね」

自分じゃ自分の声は余り好きじゃないとどこかで言ってますよね。

「ええ。ずっと好きじゃなくて。もともと、ボーカリストになりたいと思う前からロックファンだったんで。ボーカリストになりたいというか、ボーカリストにならざるを得なくなったのは高校に入ってからで。それまで聞いてた、あの、いろんなアーチストの声っていうのはぜんぜん自分とは別の声で。もうちょっと、こう、シャウトできるような声が好きで。ヘビメタも好きだし、もっとこう、ドスのきいたシャウトすると、こう、人を圧倒できるような感じの声がいいな、と」

威圧系というか。

「そうですね」

だからエレファントカシマシが好きなんですね。

「そうですね、宮本さんとかすごいいいですね」

ブルーハーツが好きなんでしょ?

「ブルーハーツも好きでしたね」

なるほどね、けっこう男気な系統に、リスナーとしては引かれるんですね。

「 そうですね、野蛮さと気品と、紙一重で持ち合わせているようなアーチストっていうのにすごく引かれますね。自分にはたぶん野蛮さって、ごく少ないし。気品はわからないけど(笑)」

大丈夫ですよ。あの、前回の書いてから、自分の中で疑問を反芻しているのは、草野さんの歌っていますごく大学生とか10代の人に愛されているってことなんですね。僕はどうしてだろうってずっと考えていたのは、草野さん自身も過去に書いているけど、その、変態性っていう言葉使ってるじゃないですか。とか、なんていうのかな、自分のそのマニアックで暗い部分を美しく見せるという表現を使ってますよね。僕が前回も書いたけど、草野さんの歌って、けっこう日常生活から外れたキーワードってたくさんあるし、それは必ずしもポジティブなものじゃなくて、たとえば死を連想させるものだったりとか、そういうものがいっぱいはいってますよね。それが広く受け入れられるのは何でかな、と思っていたんですけよ。で、こういうのはクリエイターに分析させることじゃないんだろうけど、なんか感じていることって有りますか。

「うーん、あのね、おそらくすごいね、あの、草野マサムネの音楽のもつ保守性っていうのかな、実は。すごいみんな冒険したがったり、こう、外れたことしたがっても、その、日常の中でちょっとだけしかはみだせないってことありますよね。結局、すごい世の中、代わっているように見えてものすごい大半の人達はすごく保守的だと思うし。そういうところで共感されているのかな、と思うことは有りますね」

僕が思っていたのは、冒険できないから、草野君の歌のように飛んでいるのがいいのかな、と。

「そうですね。歌の世界でだけ、ちょっとあの、トリップしてみると言うか。そういうとこなのかな、という気も。きっとね、あまりすごいもてる男の人とか、スピッツ聞かない気がするんですよ。もてたり、すごくこう、ぶっ飛んでるおしゃれな人とかは、スピッツ聞いたりしないだろうという気がします」

スピッツのファンは善男善女だろうといつも、いってるんですけど。派手さはないけど、割と良識的で踏み外さない人。僕の周囲見回しても、割とそういう人多い。

「そうですね、いつもあの、よくコンサートの会場の外で出待ちしてるファンのこたちとか、あの、そういうライターの人とかに言わせると、スピッツのファンはおとなしいっていう。だから、あの、僕等に触ろうと近寄ってきたりって言うことは余り無くて、割とお行儀がよかったり。そういうところに現れているのかなと思いますね」

歌の世界だけでトリップするというのは、草野さん自身のパーソナリティに鍵があるんですか。

「うん。それはすごくある。本当に、冒険できない性格だと思うし。うん。自分でそう思っているだけかもしれないけど、なんか、思い立ってその日にもう行動を起こしちゃうことはあまりないんですね。考えてから行動するというか。で、ぐずぐずしているうちになんか、チャンスを逃してしまったりということがけっこう多かったりする」

ネパールとかトルコとかタイとか行ったりはするんでしょ。

「うん、トルコは行ってないけど」

ギリシャでしたっけ。

「はい、そうですね、それもものすごい自分にあの、最初はね、あの、試練を課すような気で行ってたんですけど。一人旅ってだけでもなんか、恐い気がするのに。だからこう、嬉々として旅だっているわけじゃなくて、そこを見たいって言う気持ちはすごい強いんだけど、なんとなく独りで行くのは恐いし、どうしようっていうような葛藤があって。考えに考えて出かけるという」

書いているものを見ると、けっこうあの、腰の軽いバックパッカーみたいな印象を受けますよね。

「行って帰ってくるともう、楽しかったことしか残んないから。一回飛び込んじゃえば大丈夫なんすけどね」

行く前に。

「そうですね。好奇心はすごく強いんで、なんでもそうやって直に見たいなっていうか触りたいなっていう欲求はすごく強いんですけど」

たとえば、図鑑が好きだとか地図が好きだという話が有りますよね。だから、普段はわりと、直に触るというより、手触りじゃなく、空想しているほうが性にあうんですか。

「空想して、で、こう、空想が大きくなったときに直に見て見ようって言う気持ちが起こってくる感じ。でも空想は本当に、日常」

日常?

「うん。ほぼいつでも空想してんじゃないかっていう。ははは」

そういうときってどうするんですか。ただひたすら部屋でぼーっと?

「いやもう、こうやって人と話しているときも上の空で違うこと考えているかも」

おーい、 聞いてますか。

「聞いてますよ」

聞いてますか。

「ほんとに」

あの、あれなんですかね。すごくね、僕、僕等の日常ってすごく制約とか縛りとかって多いですよね。特に日本文化なんか、あれはしちゃいけない、これはしちゃいけないっていうものがたくさんあって。特に、若い人に対するぎゅうぎゅうの縛りって、だんだん強くなってる気がするんです。

「うん。実はそうだと思います」

そういう日常に、草野さんの歌って言うのは風穴を開けるような。ここにこういうチャンネルが有るよ、こっちにぬけてごらんていうのを見せる気がするんです。

「ああ、そういうふうになれば、ほんとに、理想ですけどね」

ああ、草野さん自身が望むことでもあるんですか。

「そうですね。いつも自分がそれをさがしてたし。もう、中学生くらいの頃から毎日、一番考えますよね、中高生の頃って、学校と家の往復以外に何かないのかなっていうこと、いつも考えるし。それでまあ、ある人は学校を辞めるって言い出したり。でも実際はこう、そうやってドロップアウトできるって言う人はすごく少なくて。ドロップアウトするっていう願望はものすごく強くて。でもできなくて。どっか違う世界とか違う道っていうのはいっぱいある筈だっていうのはいつも考えて」

願望あるけど、ふみきれないっていうか。ある意味でその人間っていうのは、想いは強くても勇気がある人は少ない、みたいな。そういう、非常に現実的だと思うんですよ。

「あとまあ、こうやってたとえば、話飛躍しちゃうかもしれないんですけど、こうやって喫茶店で椅子に座ってコーヒーを飲んでいるっていうのは、果たしてどういうことなんだろうっていう。たとえばほんの200年ぐらい前だと、そういう事は全然無くってね。なんか、さらにこう1万年とかさかのぼったりとか。こう、生き物としての自分っていうのを見たときに、いろんな価値観に本当にがんじがらめにされているんだろうなあとか。いうようなことを、10代のときにもう、すごい考え込んじゃって。つまりその、1万年たち200年たってできた今の価値観みたいなものにぎゅうとなっていると」

「それで、まあ、さっきちょっと読んでいたような民俗学の本とかもそうなんですけど。あの、明治の頃の日本人の庶民の生活ってどうだったのかなという興味とか。たとえば狩猟民族の価値観ってどうなっているんだろうとか。そういう興味とか湧いたりとか。人間として生きていく上でこう、ふだん、信じきっている物から解放されることはないのかなとかそういうだいそれた事とかも、10代の頃は、17,8の頃かな、いろいろ考えて」

今に続いているわけですか。

「そうですね、たまに考えますね」

そういう価値観を知りたいというのは、ある意味で今の自分を相対化したいという想いもあるんでしょうか。

「それもあるでしょうね。結局自分は何者なんだっていう疑問もありつつ」

過去に書かれたエッセイ見るとね。高校のときにノートを書いていて、俺はなんでここにいるのかと考え始めて、それと同時に前後して歌を書き始めたと。

「そうですね。小っちゃい頃から、地味だったんですよ。それもだから、自分はなんなんだろうとか、そういうこと考えがちな性格に結びついているとは思いますけど。地味というか、今とは違うかもしれないけど、いじめっ子といじめられっ子って構図ありますよね。たぶん、眼中に無いっ子だったと思うんですよ。別にスポーツできるわけでもないし、勉強が出来るわけでもなくて、授業中はこう、いつも教科書の横っちょに落書きばかりしているような。たまに、漫画が上手いね、っていうところで注目されるのがせいぜいっていう感じ の」

逆に言うと、スポーツが出来るとか勉強が出来るとかっていうのは、社会が用意した価値観じゃないですか。自分がそこでは評価されないって言う存在なわけですよね。

「だからよけいに、いろいろ考えちゃいますよね」

自分は何か人と違う能力が有るはずだ、っていう想いはあるわけですよね。

「そうですね。あと、人にあてにされたいっていう願望とか」

あてにされたいって?

「うん、やっぱり、今はすごくだからそういう意味では、恵まれているって。ステージに出て行けばお客さんがわーって(ぱちぱち手を叩く音)期待して出迎えてくれるような状況があるけど、小学校の頃は、眼中に無いっ子だったころは、別に、うん、川でおぼれて死んだところで両親ぐらいしか泣いてくれないのかな、とか。ま、泣いてくれる両親がいるだけ幸せなのかもしれないけど」

何らかの意味で自分を認知されたいという願望は有るんですね。

「うん」

歌を作り始めたというのは、そういう想いっていうのは大きかったんですか。当然その前にヘビメタを聞いたりするとか、あるでしょ。わけがわからず血が沸騰する瞬間みたいなもの。もちろんそういうのは有ると思うんですけど。

「音楽は割にずっと好きだったんで。単純にその、音楽好きがこうじて楽器を持ってみると。うち、おふくろが若い頃弾いてたギターとかもあったんで。それをなんとなく遊びでひいているうちに、コードとかのなんていうのか、コードのふしいっていうのかな、そういうのにはまっていったりとかいう過程はあるんですけど」

あの、あれなんですか。おうちは音楽好きだって書いてあるんですけど。

「うん、普通のサラリーマン家庭の。別に音楽好きっていっても、あの、あれですよ。歌謡曲をAMラジオ、家で流しているような感じの家庭から、そいでみんな歌を覚えて、気に入ったのがあればレコードを買ってきて聞くっていうような。ドーナツ版を。ま、そういう。小沢征爾のコンサート見に行くような、そういう高尚なお家ではないんですけど。ま、そうすると、それはまたなんか違う気もするけど」

お母さんは専業主婦やってるんですか?

「えーっとね、いや、働いたりやめたり」 パートとか? 「パートっぽいこともやりつつっていう」 お父さんはサラリーマン? 「ええ」 すみません。御家族っていうのは。

「えーとね、下に2人いて。2人とも結婚してますけど。弟と妹と」

長男なんですか?

「そうです」

大変ですね。

「いや別に。そういうのは自由なんで、うち。へへ」

育ったのは福岡の市内?

「市内ですね」

エッセイ読むと、子供の頃に虫を眺めて暮らしたことが出てきますよね。あと、森のにおいが好きで。

「ああ〜」

カエルに爆竹を積んだり。

「ははは」

それはお家の周りにそういう環境だったんですか?

「そうですね、今はもう、すっかり住宅地になっちゃったんですけど。子供の頃はまだ、周りに田んぼとかいっぱいある、っていうようなところで」

それは福岡の新興住宅地?

「そうですね。ええ」

じゃあたとえばその、田んぼとかたくさんあって、そのなかに団地とか一戸建て がぽんぽんとある、っていうような。

「そうですね。近所の農家では牛も飼ってたり、っていう」

福岡市内でそんなところもあるんですか。

「うん、でも福岡市ってものすごく広いから。未だにちょっと山のほうに行けば、市内でも牛を飼っているとこぐらいあると思いますよ。 さすがに僕が育ったところは今はそういうのはないですけど」

じゃあ、草野さんが子供のときは牛もかえるもいて。

「そうですね。練馬区みたいなかんじなんじゃないかな」

練馬区!(笑)。やっぱり、進化論が好きであったり、動物が好きだったりというのは、そのへんにルーツがあるんでしょうか。

「そうですね。何で好きだったのかわかんないけど。気がついたら、そういうのばっかり…昆虫の飼育にこってみたりとか。昆虫と、あと、熱帯魚とか」

カブトムシとか。

「カブトムシ…は、基本ですけどね」

必修アイテム。てことはまだバリエーションがいっぱいあるんですか。

「カブトムシとかはね、実は、虫の飼育が好きな人にとっては余り面白くないんですよ。たぶん…わかんないけど」

じゃあ、マニアとしては何を。

「鳴く虫が好きで。鈴虫、松虫、そういう類が」

音が好きなんですか。

「もあるし。あと卵混ぜて、次の年にまた孵化させるっていうような楽しみもあって。 ま、カブトムシみたいな甲虫類でも越冬する奴がいるんで。あの、ヒラタクワガタとか。そういうのを育ててる人はそれはそれで面白いと思うんですけど」

今、何か飼ってるんですか。

「いや、今はね、飼ってないですね。家空けること多いからもう、忙しくなっちゃうと。熱帯魚くらいは飼いたいと思うんですけどね」

動物すきなんですか。

「動物すきですね。犬猫も好きだし」

歌のことなんですけど、僕がスピッツの歌を聴いてほかのバンドと違うなと、ずっと思っているのは、現れるものたちなんですよね。コウモリであるとか、ビー玉であるとか。今度の新しいアルバムにも、やっぱりそういうものたちが。ものたちが違う世界の扉を開いているなと思ったんですよ。ものたち、ものっていうのはそういう文脈から出てるのかなと。

「梅干しとかこうもりとか、若者の会話から除外されているじゃないですか。おしゃれじゃないし。畳にしても。庭仕事みたいな仕事を最近ガーデニングとか言っておしゃれになったらいとかありますよよね。全てイメージで語られすぎていて、特に日本的なものはかっこわるいって思っている人が多いんじゃないかな。アメリカとかフランス的なものなら無条件に受け入れますよね。欧米コンプレックスまるだしなポピュラー音楽には強く反発を覚える。ブルーハーツは、それがまったくなかったから惹かれた」

英語の歌詞ってほとんどないですね。

「ないですね。イッツソーブリリアントってのがあったけど、あれはもうほとんどギャグ」

I need youがアイニージューとか書いてあるのも、その文脈?

「そうですね。英語ではなく日本語として。はい」

日本語を書くルーツは?

「よく分からない。詩・曲を作り始めたころは絶対見せられないような恥ずかしい歌詞も書いてるんですよ。明日を夢見てドントルックバック、みたいな。誰でも書きそうなの。そうじゃないといけないんじゃないかな、と何となく思ってて。高校のころ、そうでなくてもいいんだ、と目を覚ましたのは遠藤ミチロウさんとかあのへんですよね。何でもいいんじゃん、って。あのころの日本のインディーズの人たちって歌詞がけっこうアナーキーで。あのころのそういう人たちには影響受けてますね。歌を作り始めたきっかけはそういいうインディーズブームかな。85、6年。福岡時代ですね」

現代詩が好きだという話は?

「それはデビュー前後にあまり取材で現代詩と比較されるんで呼んでみよう、って。確かにおもしろい人はいるなって思ったけど、自分としてはどっちっかていうと定型詩を作っている感じだったんで。メロディとリズムという枠があって初めて詩を作れる。どう絡み合うかっていうのが大事なんで。俳句に近いなじゃにあかな」

メロディが先にある?

「歌詞だけ出てくるってことはない。歌作りって感じですね」

ギターで作るの?

「鼻歌が多いかな。デモテープ自分ちでごちゃごちゃ作る時ギターですね」

詩は一人部屋で?

「部屋とかスタジオとか、外からまるっきり隔絶されないと。最近は歌いながら作るんで机に向かって、という感じじゃないですね。歌って見ながら作る。詩としてよくできていても、歌って気持ちよくないとダメ。それは、日本の職業作詞家で考えて作っている人は多いと思うけど、「ロビンソン」の「誰もさわれない」て部分は、だーれも、と歌い出しは「あ」の音でないといけなかった。許されない、という制約がいっぱいある。それに会わせて詩を作る。「え」で伸ばしたいと思ったらそれで伸ばせる言葉を探す。機能的に作詞をするというか。リズム、韻とか、あと聞いた感じとか」

「よく作詞家になりたいって手紙とか来るんですけど、なんとも答えようがない。歌詞じゃあんくて歌を作っているという意識が強いから。詩だけだとどう評価していいのか分からない。メロディを作っている、というのは聞いてみようかなあ、と思うけど」

詩と歌が合わさったものとして草野さんの表現がある?

「そうですね。少なくても歌詞だけ切り放して、っていうのはありえない」

散文を書くのは好き?

「好きですね。でもあれって、駄文、作文ですよ。手紙を書いている感じに近いかな。ポエム作ってと言われても本当に困っちゃう」

「愛」という言葉はリアルじゃないと今も思う?

「使い方ですよね。ちまた流れている音楽で当たり前のように愛とか夢とかいうのはぜんぜんリアルじゃない。もっと遠回しに良い言い方があるはずなんですけど」

「梅干し」「畳」の話のように、わざと外している?

「最近はわざと使おうこともあるんだけど、あんまり決め技として使おうと思わない。安易じゃないっていうのはすごく大事ですね」

不吉な言葉がよく出てきますよね。人の死ぬ、生きている、なんでいまここにいるんだろう、とかの延長であるのかな?

「最近悪い意味で大人になったっていうか、ぼんやりしちゃってますよね。子どものころのほうがマジで恐がっていた。死を真剣に考えていた」

おじいさんが二人続けて亡くなったことが大きい?

「うん、でこの年になると友達で死んだりとか出てきますよね。でもどこかひと事なんだって自分に言い聞かせているっていうか。薄情っていうか。自分が不安にならないよう死に対するバリアっていうか。ものすごくあっけないですよね、死ぬって。それで終わるって信じられないんだろうな、って。それで宗教とかそいう世界が。いま死ぬっことてこの国ではあんまり身近じゃないような」

生命の匂いってものを消していますよね、この国は。

「なんていうのかな、無臭な感じですよね。排泄物が臭いってのも生きている証拠ですよね。消しちゃっていいんだろうか。出した物は匂いけないんじゃないかな。犬とかやっぱ匂ったりしますよね。生命感をどこかでほしがっているというのはあると思いますよ。歌の中にも出ているのかなあ」

30歳ですよね。大学生とか生まれた時から生命感希薄な環境ですよね。

「俺、小さいときトイレくみ取りだったよなあ。レコードとCDの差もすごく大きいですよね。塩ビと針の摩擦で音が出るってすごく生々しいけど、CDって仕組みがよくわからない。テレビも最後のところはよくわからないですよね。計算機にしてもそうだし。よく考えたら不自然ですよね。最後まで知らないうちに俺死んじゃうのかなあ」

「相対性理論とか一般相対性理論とかありますよね。俺はたぶん一生理解できないまま一生終える側じゃないかなってなんか悲しくなったりして特殊相対性理論ってのは塾の先生に教えてもらってなんとなく分かったんだけど。大学でちゃんっと物理やれば理解できるという話を聞くにつけ、ああ、俺は理解できなまま死ぬんだな、なんて」

音楽と同次元にいろいろ興味のぽけっとがあるんですね。

「うん、同じ次元で。それがなんでも音楽に結びつけられちゃう」

最近の興味は?集めているものとか。

「俺ね、もの集められないんですよ。どうせ死ぬんだし、とか思うから。物が捨てられないから持ち物は増えちゃうんだけど、物は集めないですね。使うためにあるものしかない。CDとかは聞くためにある。切手とか集めるだけでしょ。どうせ死ぬからこの世は仮住まい。そう考えるともの集めるとかすごく無意味に思えちゃう」

古地図とか図鑑とかは?

「僕は見るだけだから写しとかコピーでいいんですよ。それを見て「あ、ここはこうなってたんだ」とか見て楽しむ」

「音楽はずっと興味あって、CD屋とかしょっちゅう行って買うし。さっき言った古内東子とか。J-POPとか豆に聞くんですよ。それはライバルをチェックしてるんじゃなくて、単純に音楽ファンとして。最近は。。うーん。昔はフランソワ・アルディとかすごく好きで。あと去年沖縄へ行って沖縄の音楽少しはまったりとか」

それはツアーで?

「ツアーで行ってその後リピーターになって。旅行で3週間くらい。友達が何人かいるんで。大学の友達のまた友達だったりとか。(友達は?)音楽やっている人はほとんどいないですねえ。音楽やっている人で友達ってほとんどいないような気がするなあ。アルバイターとか不通のサラリーマンとか。学校が美大だったんでデザイナーとか」

漫画家になろうとした?

「中学生くらいまで憧れていましたね。でも、面倒くさがりだから、漫画ってすごき時間かかるし、歌を作るほうがぜんぜん楽ですよ。本当ぶっちゃけた話、ここで5分ください、って作れなくはないですしね」

漫画家へのあこがれは探検家に変わるわけですね。

「探検家はもう少し前じゃないかな。植村直巳の本とかにはまってたし。本多勝一の極限の民族だっけ。あのへんはものすごい。(中国への旅、とか告発ものじゃなくて?)告発ものも読んでますよ、全部。(僕もこの仕事入ったのは本多でしたね)多そうですねえ。ソウルフラワーの中川さんもすごいですよ。こういう仕事じゃないけど。きっとそうだろうなあって思って聞いたらやっぱりそうだった。僕のやっているラジオ番組にゲストで来てもらった。(よくしゃべるでしょ)そうですねえ、ぜんぜんイメージと違う人だった」

ギターはいつ始めて買ったんですか。

「中学1年のころ。うん、アコースティック。母親が若いころ買ったらしくてぜんぜん弾いていないもうぼろぼろの。ほこりかぶってたんですけど」

お母さんって世代的には?

「団塊よりもう少し前、戦中生まれくらい。(ハイカラなお母さんですね)そうですかねえ、マイク真木とかあのへんを見た世代じゃないかな」

当然エレキに進むと。

「ええ、なんかもう中学2年になったときにお年玉とかためてたお金を使って。そのときねえ、私は「眼中ない君」から脱皮しようと、自分の中のマイレボリューションな時期で。何かを得意になればいいって思って。スケボーとかそういうものでもよかったんだけど、そのころはもう洋楽ロックにはまってた時期で」

最初のギターは?

「サンバーストのストラトですね。今でも使っている。家で。(グレコとか?)いえ、トーカイ。へへへ。今は亡き。もうやっぱ手になじんでるんで。家でなにげに弾いている時は手に取ってるんですね。何本か持っているけど、アコギ1本とエレキ3本くらいかな、家には」

ギブソンが好き?

「ギブソンが好きなんですよ。あの、丸っこい音が好きで。ストラトもハーフトーンとかは好きなんですけど。ああいう、味わい系の。ははは」

アルペジオ?カッティング?

「アルペジオじゃないですね。カッティングかなあ?一時期ね、ギターを習ってたんですよ。すごい安い月謝でね。よく行っていた福岡の楽器屋で大学生が教えていたんですよ。でフージョン系のギタリストの人で、でずっとカシオペアのカッティングとかやらされた。そのへんが未だに残っている。今思えばやっといて良かったなあと思いますね」

コード中心に歌を作る?

「歌メロがあることが多いですね。コード中心に組み立てていった場合、歌あんまり印象に残らないメロディになっちゃう。コードを追うような形になっちゃうから。たまにメロディはテンションに行ったほうがおもしろいから」

自分の歌を150万人が買うというのはどんな気分?ハッピー?

「いや、ちっちゃいころいからの癖で、やっぱその150万とか聞いても人ごとのように思えて、日常生活では「あ、いまオレ眼中にない」とかすごい敏感に感じるんです。被害妄想が激しい人間になってイヤだなあって思うこともありますけど。なんかみんなで飲んで、さあ帰ろうとかいうときに、なぜかオレが頭数に入っていない些細なことで、ものすごい「あ、おれ今眼中に置かれていなかったんだ」と落ち込んじゃったりとか。仲間外れ恐怖症みたいいなの今でもありますからね」

へええ。一種のトラウマですね。学校時代の記憶ですか?

「いや、小さいときはそういうもんだと受け入れていた。自分はもう目立たないと。目立っちゃいけないような人間なのかなと思っていた時期もあって」

でも、草野正宗命みたいな女子大生いっぱいいるでしょ?あなたの歌で結婚しました、とか。

「あのその、メディア通しての自分の像って一人歩きしちゃってるから、すごいドライに見ちゃって。だから、自分一人で作ったものじゃなくてレコード会社とか出版社とかテレビ局がみんなで作り上げたものだから。そういうもんだから。しょっちゅう行っている定食屋の女の子に告白されたとかあれば、あ、オレすげえじゃん、とか思うんだけど、そういうことないですからね」

30歳になって成長してわけですね。これからどうするのか、とか思いますか。

「逆にね、もっと成長しているはずなのに、30歳になるってのはもっともっと大人になってなきゃいけない、ってイメージなのに、なんだこのまんまじゃんって気がして、逆に焦ったりするんです。もっと大人っぽくダンディに、大人にふるまえる自分になっているはずなのにな、と思うことありますよね。たまにちょっとちょっとしゃれたレストランに入るとオドオドしちゃう自分がいて、なんかいつもオドオドしている自分がいて、客観的に見るといやだな、なんて思ったりしますね。でもまあ、局がヒットするとお金とかも入ってくるし、ふと絶対昔は買わなかったプレミアついたレコード買っているときに、ああ変わっていくのかなあと思ったりしますね」

女性は不器用な方ですか?

「そうですねえ。友達になるのは得意なんですけど。本当に好きな子には大変ですね。女の友達は多いですけど、友達だから楽に話せるっていうか。女の人自体が苦手とかそういうことはないですけど」

結婚している?

「結婚してないっす」

草野さんっていまの若い世代の感性を素直に代表しているよね。

「でも、たまにギャップ感じるときありますよ。援助交際とか分かるような気がするよな。金がないと人と同じなれないから。(ナイフ中学生)おれ、それはよく分からない。金をもらうためになんでもするっていう気持ちは分かるけどね。サカキバラとか「現代のやんだ部分」とか言われるけど、違うと思う。昔からあったっていうか。ああいう猟奇的なものは。ナイフ振り回して先生刺しちゃうってのは分からないなあ。きっと 何にも見えなくなっちゃうだろうな」

(98年2月13日、東京・恵比寿のスタジオ・エビスで)





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