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■「モー娘。」現象は「イニシエーション」の実況中継

 


 モーニング娘。からまた誰かが脱退して誰かが加入したそうですが、あんまり何回も同じことが繰り返されるので小生はもうフォローするのをとっくに諦めております。


 逆に感心するのは、ヤラセであることが見え見えなのに、こうしたゴタゴタが繰り返されるたびにスポーツ紙などの注目が集まり、衰えたかと思った人気が持ち直すことです。まるで「人気の永久機関」みたいなもんで、ウマイことできとるなあと思います。


 モー娘。は97年9月、テレビ東京のバラエティ番組「ASAYAN」のオーディションに落選した5人から始まりました。


 興味深いのは「自主制作CDを5万枚売ればデビューさせる」という難問から始まって「寺合宿」とか初レコーディングとか、次から次へと無理難題が与えられ、それを彼女らが一つ一つ克服していく様子が放映されたことです。人気者になったあとも、やれ映画出演だのミュージカル出演だの、やれメンバーが脱退したの加入したの、それで人間関係がギクシャクしたのと一部始終が報道され、モー娘。とは、「降りかかる困難を克服していく物語」であるとすらいえます。


 こうした「試練に挑戦し、それを克服することで成人の仲間入りを果たす儀式」を、文化人類学や神話学では「通過儀礼(イニシエーション)(成年式)」と呼びます。古代から、こうした成年式を持たない社会はありませんでした。例えばバンジー・ジャンプは南太平洋バヌアツの通過儀礼が原型です。わが国でも、明治時代以前は「加冠」や「元服」「烏帽子着」「名替祝い」などの名で15歳から18歳までに成年式が行われていました。現在の成人式はその名残です。


 通過儀礼が姿を消した今も、この「試練に挑戦し、それを克服することで成人の仲間入りを果たす」という「成長の神話」が、日本人は大好きです。宮本武蔵の成長を描く劇画「バガボンド」がそうですし、「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」もまさに通過儀礼のファンタジー。「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」に代表されるゲームも視野に入れれば「成長の神話」こそ今日本人が渇望する商品だといえましょう。


 モー娘。のデビュー時、消費者はCDを5万枚買うという行為で彼女たちの通過儀礼に手を貸しました。つまり消費行動を起こすことで、消費者が「モー娘。を育てる作業」に参加できる仕組みになっていたのです。言い換えれば「成長の神話」をつくる創作行為が商品化されていたともいえます。

 思えば、日本人がこうした「成長神話の消費」にのめり込んだ90年代とは、日本が戦後初めて「経済成長」という大きな成長神話を失った時代。いまから思えばですけれど。

 モー娘。の人気の秘密とは、成長神話を失った社会に成長のファンタジーを見せ続けてくれること、つまり彼女たちは「社会共有の育てゲーム」とでも呼べましょう。

(AERA 2003年03月31日)





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