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日本の伝統楽器を、西洋ポピュラー音楽にどう乗せるか。実はこれ、簡単そうに見えて大変なんです。例えばフルートでドレミファソラシドを吹くのは簡単ですが、尺八では至難の業。そもそもわが国の楽器は、1オクターブを12で割る西洋音階(ピアノの白鍵・黒鍵ですね)を前提にしていない。尺八だと基本音は5つのみ、息を吹き込む角度など微妙な操作で音程を変える、と制約だらけですから、よほど熟練しないとピアノやギターの和音(コード)と合わず音痴になります(琴や三味線など弦楽器は調律(チューニング)さえ変えればさほど難しくありません)。
この一見不可能なことをやってのけたのがジャズバンド「カンデラ」です。東京で活動する日米混合5人組ですが、何とリード楽器は尺八。ピアノ、ドラム、ベースなどをバックに、アドリブを織り交ぜ自由に跳ね回るその演奏は「わが耳を疑う」の一言です。が、音色はあくまであの素朴で懐かしい尺八そのもの。それがジャズの和音やリズムと溶け合い、誠に心地よく響くのです。
この尺八奏者ブルース・ヒューバナー氏(42)は米国人。それだけならもう珍しくないのかもしれませんが、彼はカリフォルニア州立大学と東京芸大邦楽科で西洋音楽と伝統派尺八の両方をマスターしたプロ音楽家であり、二つを実際に演奏で融合させてみせたパイオニアでもあります。
「『間』の概念を取り入れたオリジナル尺八ジャズを」というその2年間の試行錯誤の結果が、CD「MOGAMI」となって世に出ています。民謡をラテンジャズにアレンジした「最上川舟唄」「南部牛追唄」にも感服しますが「天戸川」「桐生」などオリジナル曲も、ジャズと日本民謡の境界線上を突っ走るような摩訶不思議な快感です。
同氏も、そのよき音楽的伴侶(パートナー)である米国人ピアノ奏者ジョナサン・カッツ氏も、教師などをしながら日本に定住して約10年。米国という異文化から来た彼らが、異国で地道な努力を積んでくれたおかげで、わが尺八が楽器として「再発見」され、新しい音楽が生まれたわけです。名声も金も求めず、新しい音楽のためには精進を惜しまない彼らのような人たちだけが「アーティスト」の名に値することを久々に思い出しました。安直に洋楽のサル真似ばっかりしている一部のJポップなんかより、彼らの方が東京発の音楽をよほど豊かにしてくれているのではないでしょうか。
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(AERA 2002年07月01日)
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