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とはいえ、このステージの徹底した脳天気さは一つの芸ですよね



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トータス松本
軽薄・脳天気の代表みたいに言われているトータス松本。実は、すごく繊細で思慮深い人です。人気が出てもあくまで冷静


ウルフルズのライブは楽しい。ディズニーランドなみのパッケージ・エンタテインメントだ。格好いい演奏あり。決してうまいとはいえない、へなちょこ踊りあり。本場大阪直送の漫談だってやる。

「みんなあ、トータスに会いたいかあーっ!」

「イエーッ!」

スモークに包まれ、せり出し舞台からトータス松本登場。クサい。まるで下手な歌舞伎の大見得。ここまでクサいと逆に笑える。
客席では、ティーンとおぼしきお姉ちゃんたち(九割は女性)数千人がキャーキャードンドン飛ぶわ跳ねるわ。誇張でなくホントにホールの床が揺れている。

「イェーイ君を好きでよかった/このままずっとずっと死ぬまでハッピー/バンザイ君に会えてよかった/このままずっとずっとラララふたりで」(『バンザイ`好きでよかった`』)

何という脳天気な歌だ。パチンコ屋のネオンみたいな照明の中、お尻半出しの銀ラメ服で歌い踊るトータス。ビデオでは、チョンマゲ姿のバカ殿に扮するわ、軍隊を引き連れて商店街をぶっちぎりで行進するわ。「A・A・P」を自称するお前は、CDを百万枚売って浮かれた脳天気なアホなのか?

それが、全然違うのだ。

「僕が中学のころ、ルービック・キューブて流行ったんですよね。みんなわーと買うたけど、六面ちゃんと揃えた奴は百人のうち五十人もおらんかった。CDも、そんなもんですよ」

インタビュー席に着いたトータスは、自分の人気をクールに分析する、物静かな痩身の青年だった。

「僕にとって音楽が切り離せないように、ウルフルズの音楽を切り離せないと思ってくれる人が何人いるのか。まだ少ないと思うんですよね」

実は、長年売れずに苦労した。デビュー後、勇躍出したアルバムは一万枚も売れず、たちまち廃盤。三十曲作ったらプロデューサーに二十八曲ボツにされるなど、悲惨な目に遭った。カネも底を突き、一時は「こら酒に溺れて死ぬなー」と思ったそうだ。

「自分の日常に起こった事、おもしろい事を詞にしていく。僕の歌は日記みたいなもんなんです」大ヒットした「バンザイ」は、トータスが十年間つき合って結婚した奥さんにプレゼントした曲だそうだ。人間臭くて、生活実感たっぷり。そんな歌が、人々の胸を打つのだ。

「(パソコンの)打ち込み音楽とか、もう記号化した『新しい事』はやりたくなかった。なら残るは日本語の歌詞ですよね。日本のロックや、と」
よく聞くと、ウルフルズの曲は渋い。ファンクやディスコ、サーフロックなど正統派ポップスのエッセンスが、さり気なく詰めてある。トータスが好みとして挙げるのも、黒人ソウルだったり戦前のシカゴブルースだったりする。
「昨日(ザ・バンド解散公演を描いた)映画『ラスト・ワルツ』を見たんですよ。ああオレも音楽やってて良かったなあ、明日からええ曲書かなあかんなあ、そう思いました。クサいですけど」
しみじみと言うこの人は、本当に心から音楽が好きなのだ。

実は、トータスは英語がさっぱり分からない。好きな曲でも、歌詞の内容を知らないことが多い。
「それでも、洋楽を聞いてこんなに感動するのはなぜなんでしょうね。ホント不思議なんです。僕の好きなニール・ヤングなんか顔は不細工だし声も悪いのに、何十年も人の魂を揺すぶって離さない。あれこそホンモノですよ」
そう夢見るように語る。が、なぜか次の瞬間には「謙虚に反省」してしまうのがこの人だ。
「ウルフルズもそれを目指していますが…。伝えきれない自分の力量もありまして…。毎回気が滅入りますねー」

中学時代は、古典落語クラブの部長さんだった。今も六代目笑鶴、仁鶴や談志をこよなく愛する。
「ヘンな衣装を着るのは嬉しいんです。バカ殿の格好とかできて、この仕事してて良かったなあと思う。それを見て人が喜ぶのも嬉しい。そういう血なんでしょうね」
いつも人を喜ばせることを考えている。トータスはそんな人だ。

(AERA 97.5.12)




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