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俺はクイーンだ!チェッペリンだ! あこがれのロックスターに演奏や衣装をそっくり真似る「なりきりバンド」。これでも千人単位の客を集めてしまうのだから恐ろしい。 |
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「今の演奏は七三年七月二十七日のやつでした」 「究極のレッド・ツェッペリンコピーバンド」の異名を取る「シナモン」は、この道すでに十八年。CDを三枚発売し、ニューヨークとロスでも演奏したことがあるというから、恐ろしい。 約二千枚の海賊ライブ盤を研究、アドリブが多く舞台のたびに違うツェッペリンの演奏を、日付を指定して再現できる。本物がやった演奏ミスまで再現してしまう完璧主義。代表的な「移民の歌」あたりの曲になると十通りの演奏が可能。ギター、ベース、ドラムそれに歌と、パターンの組み合わせ次第で種類は無限だとか。 ギタリストのJIMY氏のギターコレクションは、それだけでギター雑誌が特集を組むほど。本物のジミー・ペイジが使ったものなら、一本百万から五百万円するレア・オールドのレスポールやストラトも買い集め、今や十数本。本物が使ったギターやアンプを探しに米国にまで足を運び、テルミンとかメロトロンとか、とうの昔に生産中止になった機材まで楽器屋の倉庫で見つけしまう。 ケシの花やらドラゴンやら派手な刺繍の衣装は、型紙を起こして仕立て屋に特注。ペイジが着ていた衣装はすべて再現できるとか。 なりきるためか、メンバーたちは私生活について多くを語りたがらない。周囲の話では、名古屋に住む四十歳前後の自営業、公務員、エンジニア、ということだ。JIMY氏は言う。 「ジミー・ペイジの演奏が好き。ただそれだけです。まだまだ完璧には近づいていません。もっと勉強したいと思います」 なりきりバンドが成功するには、条件がある。誰もが本物の曲や姿をよく知っていること。本物の方がすでに解散していたり、メンバーが死んでいたりするとなお良い。そして、本物と同じくらい演奏がうまくないと、なりきりは勤まらない。機材を揃える資金がいるので、年齢は高めになる。 札幌市の「あ!ビートルズ」は、ビートルズのメンバーの風貌が年とともに変わるのに合わせ、かつらから付けヒゲ、衣装も変えて「ヘルプ!四人でアイドル」という三十分のビデオまで作ってしまった。が、その正体は、全員四十歳台の会社社長さんたち。その一人、ポール・マッカナウソ氏こと田中洋さん44は、バンド解散後も続いて「ビートレス」を結成したりと、なかなかしぶとい。 少女漫画から抜け出してきたような華麗な容姿と演奏で人気が高かった「クィーン」も、なりきり対象の横綱だ。「グィーン」「キュイーン」「ボイーン」など、全国になりきりバンドがある。 東京の「ク・ウィーン」はそのひとつ。ライブを本物に似せるため、衣装や楽器をコピーするのは当たり前。決めのポーズやしゃべりまでコピー対象だ。ライブビデオで花火が爆発していれば、こちらも爆発させる。一ステージ三百万円かかるのも道理である。 「どうせコピーは自己満足だ。それなら、とことん自己満足を貫徹するぞ、と」 ボーカルのフレディー・マーキュリー役のフレディー江藤氏はそう言い切る。昼間はコンピュータ会社の法務部門で働く、まじめなサラリーマン。本物のマーキュリーのマイクの握り方が左手と右手でいかに違うか、研究成果を得々と語ってくれた。 クィーンのなりきりを初めて人前でやったのは九〇年。友人の結婚式のパーティーの席上だった。舞台に上がるなり、客はみんなのたうち回って笑っている。そのくせに、知っている曲になると全員が大合唱だ。 本物のフレディー・マーキュリーが九一年十一月に死んだことも大きかった。今や、コンサートをやれば客は七百人集まる。クィーンの名曲を演奏すると、ハンカチで目頭を押さえる客の姿も。 「みんな僕らを通じて本物を見ようとしているんです。これは、人前でやるとキモチいいですよ」 そう言うわりに、江藤氏の体型はかなり本物より縦方向に小さくて横方向に大きく、さらに額が広いような気がするが。 「どんな体型だろうが、関係ない。オレがフレディーだ。こっちが照れると客も照れる。まず本人が騙されることです。ハッハッハ」 (アエラ 95.8.7) |
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