![]() |
|
テレビジョン 一人のミュージシャン、一つのバンドがその後のロックの流れを変えてしまうような影響を残すことがある。テレビジョンはその一つだ。 |
|
地下鉄なら、B・D・F・Q線のブロードウェイ・ラファイエット駅から徒歩5分。ハウストン通りとバワリー通りの角を北に曲がった所に、CBGBという狭くて小汚いクラブがある。 今からちょうど20年前。ヒッピーくずれのヒリー・クリズタルは、ビールが1ジョッキ25セントで飲めるような安酒場をここに開いた。が、集まってきたのはへルズ・エンジェルズ(暴走族)とホームレスばかり。近所の苦情に突き上げられ、ライブハウスに商売替えをもくろむ。 「これからはカントリーとブルーグラス、ブルースがはやる」と踏み、頭文字を取って店をCBCBと名付けた。彼の読みは完全に外れるが、CBGBはその名をロックの歴史に残すことになった。1975年ごろから、後に「ニューヨーク・パンク」と呼ばれる前進的なバンドの一群が、ここをホームグラウンドに演奏するようになったからだ。 ニューョークの音に刺激され、ロンドンで続いて起こったムーブメントがロンドン・パンク。この流れがやがてニユーウェーブと呼ばれるようになり、ワールド・ミユージックからラップ,ヒップホップに至るまで、その後のポピュラー・ミュージックの流れを大きく書き替えることになったのは、ご存知の通りだ。 トーキング・へッズ、ラモーンズ、ブロンディ、パティ・スミス。当時アマチュアとしてCBGBに出ていたア・ティストである。個性的な顔触れの中で、後のロックに与えた影響の大きさでは「テレビジョン」が傑出している。 テレビーンョンを際立たせていたのは、ギタリストでありリーダーのトム・ヴァーレインの異色の演奏だった。アルバート・アイラーやジョン・コルトレーンといったアバンギャルドジャズにヒントを得た彼のギターは、それまでのロックの文脈ではどうやっても考えつかない斬新なアイディアに満ちていた。 l977年に出た彼らのデビューアルバム「マーキー・ムーン」は、今聞いても革新的だ。とはいえ、特に難しいテクニックを使っているわけではない。なのに、人間の情念を写し出す鋭い感受性をうかがわせる音を出す。そして、フランス象徴主義詩人に影響を受けたシュールな歌詞(ちなみに、ヴァ−レインとはヴェルレーヌの英語読みである)。 そんなテレビジョンを真っ先に評価したのは、大西洋をはさんだイギリスのミュージシャンだった。有名なのは、今や世界的スターになったU2のギタリスト、エッジ。 「テクニックや音楽理論にとらわれず、自分の感性に忠実に音を出す。彼の演奏は刺激的だった」 1987年の大阪と、昨年冬のニユーヨークでの2回、ヴァ−レインのステージを見たことがある。薄汚いTシャツにジーンズ姿でステージに登場した彼は、暗い照明の中、うつむいて黙々とギターを弾いていた。愛用の古ばけたフェンダーの音が狂うたびに、ペたんとステージに座ってチューニングを直す。本当に、何の飾り気もなかった。それだけ演奏に自信があるのだろう。 その彼らが、解散後13年を経て昨年秋に再結成アルバムを出した。音数が少なく静謐でありながら、情念をまるごとそのまま音にしたような凄みのある演奏。ヴァーレインのギターは、少しも衰えていない。 (OCS NEWS 93.6.25) |
|
|
| Copyright(C) 1997 Hiromichi UGAYA. |