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[シリーズ医療構造危機 1]
それでも君は医師になるのか?
病院勤務はサラリーマンより薄給。開業は絶望的。大学教授はポストがない。医師過剰時代が来て医療界には常識破りの変化が起きている。医師がおいしい職業だった時代は終わった。


この仕事、六年も浪人する価値があったのかな。ある県立病院に勤務する内科医33は、ビールでおでんをつつきながら、そんな独り言を言った。

父親は国立大医学部の教授。幼いころから、自分は医者になるものだ、と信じて育った。進学校から父と同じ大学を目指すが、結局六年浪人して別の国立大学に入学。三年前に卒業、ようやく病院の現場に出た。

勤務時間が長く、休めないのは覚悟していたからいい。驚いたのは、拾料の安さた。基本拾が二十四万円。通勤定期代も、妻と二人で暮らすアパートの家貸十二万円もここからやりくりする。ボーナスはなし。三年目まで残業手当もなかった。有拾休暇がないので、夏休みを五日間取ったら拾料を四万円引かれた。

生活が苦しいので、つてを頼って他の病院で夜間当直医のアルバイトをしている。一回三万円になる。が、翌日はぐったりして仕事にならないので月二回が限度。先輩医師に「バイト代が十年前より値下がりしている」と指摘されてショックを受けた。患者からの個人的な謝礼は、月に一回、二万、三万円もあればいい方。これが彼の収入のすべてだ。

さらに「将来暗い」と思ったのは、学会のため出張したときだ。同行した五十代の「部長」医師が、自分と同じ一泊六千円のビジネスホテルに泊まっていたからだ。後で聞くと、部長でも年収千万円そこそこだという。

ある私立医大の付属病院で働く外科医(32)の場合、毎日病院に泊まり込んで最大十五人の思者を担当する「野戦病院のような」勤務条件で、月拾は当直手当を入れて十八万円。同僚の大半は親の仕送りを受けている。

上司の話を間くと、40歳代でも月拾は五十万円前後らしい。私立医大を卒業するのに、入学金千万円と学費が六年で三千万円。プラス、束京で暮らすのに親からの仕送りが月二十万円かかった。親は開業医だが後を継ぐ気はないので、かかった投資を回収できる見込みはとてもない。

いま、二人とも転身を考えている。内科医氏は、公衆衛生学の博士号を取り、さらに米国への留学を計画している。外科医氏はインドネシアの医療機関で働くべく、近く日本を離れる予定だ。

「若い医師の嘆きはまったくその通りだ。いま、若手医師を取り巻く環境にプラスの要素がない」

日本医師会の中村努常任理事はそう話す。

若い医師が将来を暗く感じる理由は主にこうだ。
@病院勤務医の給与は今ではサラリーマンより低い。
A開業したくても都市部での開業はほぱ不可能。
B大学へ戻って研究者になろうにもポストがない。
つまり八方ふさがりなのだ。

「大病院の勤務医の拾与は、大手金融・保険業の大卒労勧者を下回るまでに低下している」
医師所得を二十年間研究している二木立・日本福祉大学教授はそう指摘する。

従業員千人以上の大病院で、医師の年収は年齢三十八・四歳で九百二・七万円(九二年)。百人未満の病院は44・6歳で千二百八十七・三万円だが、こちらは九○年をピークに低下している。(『病院』九四年三月号)

大ざっばに言うと、医師になって三年目ぐらいの病院肋務医の拾与は次のようなランクになる。@民間病院。月収三十万〜七十万円A国立・公立病院。十二万〜十五万円◎国立大学付属病院。十二万〜十五万円C私立大学付展病院。三万〜五万円。

@の中でも地方勤務だと「年収二千万〜三千万円」をうたう例もあるが、これはなり手が少ないから。Aでは、病院の規模が大きくなるほど、就職希望者が増え、拾与は安くなる。BCは、大学医学部とのつながりを作るため薄給でも志願者は後を絶たない。

なぜそんなに給料が低いのか。背景にあるのは、民間・公立を間わず病院の経営が悪化し、収益が伸びないことだ。全国公私病院運盟が昨年六月に実施した調査では、約千病院のうち七四%の病院が赤字経営だった。しかも、五七%の病院が「経営が悪化している」と答えている(厚生省の九三年六月調査)。昨年の診療所(開業医)と病院の倒産は全国で二十三件(帝国データバンク)と、医療機関が倒産することもちっとも珍しくなくなった。

「医療機関の経営は昨日今日おかしくなったわけではない」
医療コンサルタント団体「メディカル・マネジメント・プランニング・グループ」の川原邦彦理事長はそう指摘する。

医療費の増大に業を煮やした厚生省は、八一年から「医療費抑制策」に転じた。この影響が出て赤字病院や診療所が急増したのは八八年ごろからだった。
「医療機関の収入は、診療行為の費用を国が定める『統制経済」。入りのパイプが細くなるとすぐ干上がる」(川原理事長)

医療費全体のパイは縮小しているのに、医師は過剰供拾されているから、一人あたりの取り分はどんどん小さくなるわけだ。

薬の公定価格の引き下げも大きい。厚生省は医療保険から医療機関に支払われる薬の公定価格の引き下げを重ねる一方、九二年から算定方式を変えて、薬品業者が常識外れの値引きができないようにした。かつてあった「八割から九割値引きされた薬を売って、公定価格との差益で医療機関