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■元週刊朝日編集長・森啓次郎氏からの抗議文について■

 

 03年7月10日、元週刊朝日編集長・森啓次郎氏から、「うがやジャーナル」03年7月1日付掲載の「なぜ朝日新聞社を辞めたのか」中の「98年まで週刊朝日の編集長だったM氏」の記述について抗議文がメールで届きました。以下に、森氏の同意を得て、その抗議文を掲載するとともに、抗議の内容について調査した結果を報告します。

 森氏は、小生が書いた「M編集長」のくだりを「全くの事実誤認」と主張して「削除、訂正」を求めれおられます。小生が再度調査した結果は下に記すとおり「森氏の主張は錯誤に依拠しており、要求を受け入れるだけの信憑性に欠ける」ということです。

 残念ながら両者の言い分はまったく食い違いますので、こうした場合の原則「両論併記」に立ち返って両者の主張を併記し、読者のみなさんのご判断を仰ぐことにします。

(注)小生の文中で「M氏」はイニシアル表記でしたが、森氏の同意がありましたので(末尾の『経緯』その3参照)、ここでは実名で掲載させていただきます。


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【森氏からの抗議文】


抗議文


 あなたの書いたHPに、「実際、98年まで週刊朝日の編集長だったM氏は、ワインの収集が趣味で、週刊朝日のグラビアを使って、世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材を部員にさせていた。無論、海外取材に行かせてもらうかわりに、部員はお土産のワインを買ってくることが暗黙の了解である(これも取材に行った編集部員から直接聞いた)これは噂だが、彼の自宅にあるワインセラーにあるワインの大半は会社の経費で買ったものだそうだ。」とありますが、全くの事実誤認ですので、訂正の上、削除することを求めます。


● 事実誤認(1)「98年まで週刊朝日の編集長だったM氏は、ワインの収集が趣味で」――――ワインの収集は趣味ではありません。飲むのは好きです。


● 事実誤認(2)「世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材を部員にさせていた」――――当時の「週刊朝日」にそうしたシリーズはありません。世界のワインを取り上げた企画はありましたが、すべて国内での取材です。担当のKさんに確かめたところ、取材では1本を買い、外見を撮影した後、その場で開け、グラスに移して色味などを撮影したとのことです。ワインはその場で処理したとのことです。経費節減上、1本しか買いませんでしたから、あなたの言うM氏に渡ることはありませんでした。


● 事実誤認(3)「海外取材に行かせてもらうかわりに、部員はお土産のワインを買ってくることが暗黙の了解である」――――事実誤認2から事実誤認3は当然である。しかし、もしかしたら、誤解したかもしれない事柄が2回ありました。それは、連載を見たフランス政府とオーストラリア政府から招待があったことです。フランス政府の場合は、担当のY君(烏賀陽注:このカッコ内は森氏の要請により削除)が、たしか読者代表何人かを連れてブルゴーニュとボルドーを旅しました。読者を連れての旅だったので大変だったと言っていたことを記憶しています。彼が、編集部にお土産を買ってきたことはあったかもしれませんが、個人的にワインのお土産をもらったことはありません。また、オーストラリアの場合は、先のKさんが行きました。ワインはワイナリーで飲むだけで、持ち帰ることはなかったと言っています。唯一、(注:s氏の社内職歴を森氏の要請により削除)s君に頼まれて(注:森氏の要請により形容詞を削除)オーストラリア・ワインを1本お土産に買ってきたそうです。しかし、どちらもご存じの通り、「招待出張」の場合、会社から出張費は出ませんので、たとえワインを買ってきたとしてもそれは会社のお金ではなく、彼らのポケットマネーだったはずです。


● 事実誤認(4)「これも取材に行った編集部員から直接聞いた」――――一体誰でしょうか?Y君、Kさんからでしょうか。実は、それ以外の全く関係ない人物から聞いたのではないですか?


● 事実誤認(5)「これは噂だが、彼の自宅にあるワインセラーにあるワインの大半は会社の経費で買ったものだそうだ。」――――私の家には、現在も過去も「ワインセラー」なるものは存在しておりません。近くの安売り自慢の酒屋やスーパーのワイン売り場で、財布と相談しながらワインを買うことはあっても、会社の経費でワインを買ったことはありません。


つまり、君の書いたほぼすべての文章が事実誤認に基づいているということです。個人的HPといえども、あなたも書いているように自由に引用するメディアが出てくる以上、そして、そのことによって名誉を毀損される人物が出てくるという事実があります。君もジャーナリストならば、もう一度きちんと取材し直して、正しい記事を書いてください。誤りだったことが分かったならば、ただちにHP上で訂正を出してください。それが、これからノンフィクション・ライターとしてやっていく最低のモラルだと思いますがどうでしょうか。                 

「98年まで週刊朝日の編集長だったM氏」こと森啓次郎


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【烏賀陽から再調査の報告】


 この抗議文を受けて、調査をした結果、残念ながら、この森氏の主張そのものが重大な錯誤に依拠しており、従って根拠が薄弱であり、要求を受け入れるに足る信憑性に欠けると判断せざるをえませんでした。従って「全くの事実誤認ですので、訂正の上、削除することを求めます」との森氏の求めには応じかねることを報告いたします。


(1)「ワインの収集は趣味ではない」が事実かどうかは、森氏の自認あるいは自称に属することです。

しかし、より正確を期するため、当該の文中「M氏は、ワインの収集が趣味で」の部分を「M氏は、ワイン好きで」と訂正します。

(2)「当時の『週刊朝日』にそうしたシリーズ(世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材)はありません。世界のワインを取り上げた企画はありましたが、すべて国内での取材です」という森氏の記述は事実に反しています。

 今回、森氏の抗議を受け、小生は念のため「週刊朝日」のバックナンバーを手にとって一冊ずつ調べました。その結果、森氏の週刊朝日編集長在任中である98年10月から11月にかけて、カラーグラビアページに以下のような世界のワイン生産地を訪問する「短期集中連載」記事が掲載されていたことがわかりました。念のためコピーを取ってあります。

(もちろん、小生は連載当時に記事を読んでいるのですから、記事が存在することは自明だったのですが、誰あろう編集長であった森氏が『記事が存在しない』とする主張の重大性に鑑み慎重を期しました)

「短期集中連載 地球ワイン紀行」


*第1回 98年10月2日号 6〜12ページ ポルトガル「『液体の宝石』をはぐくむ渓谷/ドイツ「『甘くない』ブドウの有機栽培」


*第2回 98年10月9日号 15〜17ページ アメリカ「『幻のピノ』は舌ざわりが絹のよう」


*第3回 98年10月16日号 15〜17ページ スイス 「レマン湖の光と風がはぐくむ澄んだ味わい」


*第4回 98年10月23日号 15〜17ページ イタリア「ペルージャ近郊で歴史は”今”つくられる」


*第5回 98年10月30日号 15〜17ページ オーストラリア「豊かな大陸で育った新しい味と香り」


*第6回 98年11月6日号 14〜17ページ フランス・ブルゴーニュ「ナポレオンが愛したワイン」


*第7回 98年11月13日
 9〜12ページ フランス・アルザス「おいしいワインは”天使の歌声”が聞こえる」/14〜17ページ スペイン「眠れる巨人が目を覚ます」


 この連載の冒頭には、各回ごとに写真撮影者・取材者の名前が毎回クレジットされています。これは通常「以下の記事内容は事実である」ことを担保する文責者を明らかにするためのものです。

 また連載開始の「巻頭言」にはこうあります。


「葡萄の果実を原料として、糖分を発酵させるだけの酒、ワイン。人類が最も古くから飲んでいたといわれる酒だ。ワインが世界史に登場するのは紀元前2000年ごろ。そのワインも20世紀末の今ではヨーロッパをはじめ、アフリカ、オーストラリア、アメリカなど世界中で生産され、多くの人たちの口を潤している。なぜ、これほどまでワインが愛されるのか。本誌では、その魅力を探るため、世界8カ国の生産現場をルポした」


 もし万一、森氏の「当時の『週刊朝日』にそうしたシリーズはありません。世界のワインを取り上げた企画はありましたが、すべて国内での取材です」という主張が事実であるなら、上記の「世界8カ国の生産現場をルポした」という連載記事は虚偽ということになってしまいます。

 98年10月2日号「ポルトガル」の回でいえば「儀式のあと、ポートワインの試飲の機会に恵まれた。(中略)高貴な色と香りはまさに『液体の宝石』の趣がある。いざ口に含むと、濃厚な甘みとむせかえるようなアルコールが、のどにまとわりつく」といった記述をはじめ、連載を通しての具体的で臨場感あふれる人物や風景の描写、撮り下ろし写真などから考え、とても現地に行かずに国内で書いたとは思えません。

 また、7回もの「現場ルポ」が「すべて国内取材による」虚偽だったのなら、当時編集責任者だった森氏の責任はいかなるものか、言うまでもありません
 
 もちろん、記事が厳然と存在することから常識的に考えて、森氏の主張は錯誤に依拠していると判断します。

 抗議文を受け取った小生は、森氏の勘違い、記憶の間違いではないかと推測し、森氏にメールを送り、記憶を確認していただくよう再三促したのですが(下記『経緯』その4、8を参照)、同氏は「当時の週刊朝日をぜひご覧下さい。私が在任中にそうした企画はいっさい存在していません」と完全否定を繰り返しておられます(同その5、9、10)。まさに氏の指摘どおりバックナンバーを当たれば簡単に確認できる事実をなぜ森氏が重ねて否定されるのか、理解に苦しみます。

 


(3)森氏が抗議文で触れている「フランス政府からの招待」による取材は「読者代表何人かを連れてブルゴーニュとボルドーを旅しました」という記述が98年11月13日号の内容と合致します。「オーストラリア政府の招待」による取材は、取材者のイニシアルが98年10月30日号の記事と合致します。

 しかし、なぜ森氏が「出張費の出ない『招待出張』」=招待取材(取材経費をスポンサーが負担する)記事の存在だけを認め、それ以外の記事は存在さえも否定しているのかは、小生にはうかがい知ることができません。不自然かつ奇怪です。何らかの意図があるのかもしれませんが、即断は避けます。

 

(4)小生が取材先から聞き、「なぜ朝日新聞社を辞めたのか」に書いた当該の部分に、今回修正を加える必要はないと考えます。


 小生にとってこの説明が不利であることは承知しておりますが、こうとしか言いようがありません。というのは「誰に、どういう形で聞いたのか」のデータは、明らかにすればするほど取材源が特定されてしまうからです。小生の話を聞いた相手がまだ朝日社内にいる以上、人物が特定されてしまえば、その人に不利益が及ぶ可能性を否定できません。

 もちろん「××さんがこれこれこう言って、土産のワインを見せてくれた」「『××の取材に行ったおりに編集長に土産のワインを買い、手渡した』とだれそれが話した」(あくまで例え話です)と、ここでそのやりとりの一字一句を再現することは可能ですし、そうしたほうが、説得力を持って説明できることは百も承知です。

 が、これは取材源を守るためにはできない、やってはならないことなのです。「事実と信じる根拠があるので書いた」としか言えないのです。これはニュース週刊誌の編集長だった森氏には「釈迦に説法」のたぐいのはずなのですが(なにしろ『地球ワイン紀行』で海外取材に行った関係者は、やろうと思えば森氏がしらみ潰しに調べうる人数なのです)。


(ご参考までに補足します。連載が進行していた98年秋当時、小生はニューヨークに駐在していたのですが『週刊朝日』は毎号読んでいました。離れていても、この程度の情報を教えてくれる友人はいましたし、帰国後もこの話は聞きました)


 これは読者の方々への参考ですが、贈収賄事件などを取材した小生の経験の範囲でいえば、こうした贈答にかかわる事実は、当事者が「送り手」と「受け取り手」の二人しか存在しないため、それを第三者が「目撃する」ということは、まずありません(『密室性が高い』と警察や検察の人たちは形容します)。よって当事者のうち一人が「そんな話は知らない」と否定してしまえば、証言者は一人しか残らず、裏を取る(証言の内容が一致する)ことが非常に難しくなります。


(5)「これは噂だが、彼の自宅にあるワインセラーにあるワインの大半は会社の経費で買ったものだそうだ。」の部分は、はっきり「噂だが〜だそうだ」とただし書きをつけてある通り、小生が聞いた「噂」です。小生が当該の「噂」を週刊朝日編集部員から聞いたことは事実ですので、事実に反するとは考えません。

 また読者も「この部分は『噂』なのだから、事実ではない可能性もあるのだな」という前提で読まれていると考えます。

 また「森氏の自宅にワインセラーがあるかないか」は、本文の論旨に関係のない事柄ですので確認するに値しません。

しかし、より正確を期するため、当該の文中「これは噂だが、彼の自宅にあるワインセラーにあるワインの大半は会社の経費で買ったものだそうだ。」の部分を「当時『彼の自宅にあるワインの大半は会社の経費で買ったものだ』と、ある週刊朝日の部員は言っていた」と訂正します。


 なお、蛇足ですが、俵万智氏のホームページ「チョコレートBOX」内「万智の交遊録」第11回「『週刊朝日』編集長の森啓次郎さん」には、森氏の自宅には赤い漆塗りの特注バーカウンターがある、という記述があります。

 その記載内容によれば、森氏は「自宅にバーカウンターを作るぐらいですから、大のお酒好き。特にシャンパンとワインには、うるさい人です(あ、グラスにも。アンティークショップでは、いつも目をらんらんと輝かせています)」だそうです。「東京のご自宅で、自慢のバーカウンターでご満悦の森さん」というキャプションつきの写真も出ています。


 あくまで私見ですが、もしこれが事実なら、ワインセラーのあるなしなどは、相対的に些末なことのように思えます。「近くの安売り自慢の酒屋やスーパーのワイン売り場で、財布と相談しながらワインを買う」ような質素な方にしては、「特注の漆塗りバー・カウンター」は豪奢な施設のように見えて、不思議でなりません。

 


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【経緯】


今回、森氏の抗議文を受け取ってから烏賀陽が再調査をするに至るまでのやりとりは次の通りです。森氏の主張は抗議文のあとメールをやりとりする中で補強されている部分もありますので、公平を期するため付記します。


(1)2003年 7月 10日 木曜日 1:02 PM 上記抗議文がメールで烏賀陽に届く。メール本文は以下の通り。


「抗議文を送付します。
返事を待っています。  森啓次郎」


(2)2003年 7月 10日 木曜日 6:10 PM 烏賀陽、森氏へ返信メールを打つ。


「拝復 森啓次郎様
メール拝読しました。ご指摘どうもありがとうございました。
それでは、公平を期するため、森様からいただいた抗議文をウエブに掲載させていただきましょう。
取り急ぎ略儀にて失礼します。
烏賀陽拝」


(3) 2003年 7月 11日 金曜日 1:00 AM 森氏から烏賀陽へ返信メールが届く。


「早速の返事、ありがとうございます。
 しかし、私の抗議文をただ載せることが、公平を期することにはなりません。事実を調べて、間違っていたら、間違っていたとウエブの読者に謝り、削除することが「公平を期する」ことではないでしょうか。ただ、事実関係を調べるのには少し時間がかかるでしょうから、「現在、こういう抗議文が届いています。事実関係を調べて、その結果をウエブ上で報告します」と書いた上で、私の「抗議文」を掲載するのならば、許可します。ただし、文章の中にある「Y君(***)」は、( )の中の「***」を削除してください。人間が特定されます。また「++++」の部分も、特定されますので、削除してこう直してください。「唯一、S君に頼まれて、オーストラリア・ワインを1本お土産に買ってきたそうです」。この2つ部分の削除も掲載条件です。
 私の名前は、そのまま出してもかまいません。訂正が一つ。「君の書いたほぼすべて文章が・・・」とありますが、「すべて」の後に「の」が落ちています。「君に書いたほぼすべての文章が・・・」に、できれば直してください。
森啓次郎」


(4)2003年 7月 11日 金曜日 1:30 AM 烏賀陽から森氏へ返信メールを送信する。


「拝復 森様
ご返信拝読いたしました。ありがとうございました。
小生の書いた文章についてご不快の念はごもっともかと存じます。その点はお詫びいたします。
が、抗議文のご指摘の点の中には、世界のワイン「世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材」を「当時の週刊朝日にそうしたシリーズはありません」とされる点など、どうも小生の理解を超える部分もあります。森様が編集長在任時代は掲載していなくても、森様が在任中に企画が成立し、退任されたあとに掲載された記事もあったのではないでしょうか。
誠に僭越ながら、小生も何の根拠、証言もなしに当該の文章を書いているわけではないことはご記憶いただきたく思います。
さらにソースが複数あり、きわめて信憑性の高い相手であれば「裏付けが取れている」と判断することは朝日の業務でも判断として許容されていたのではないかと思います(この作業の常として、ソースの秘匿をご理解ください)。
つまりこの場合は、小生が信じるに足ると判断した内容と、森様のご指摘と異なっているため、抗議文をそのまま掲載するのが森様にとっても、また小生にとっても公平かと考える次第です。
また、ご自宅に「ワインセラー」がなければ、それは小生に証言した人間の記憶の間違いでしょう。「ワイン冷蔵庫」だったのかもしれません。それは訂正をためらうものではありませんが、こうした細々とした点を「訂正」していくと逆に森様があげ足取りをしているような印象を残しかねないと案じます。
以上、取り急ぎお伝えいたします。
烏賀陽拝」


(5)2003年 7月 11日 金曜日 2:29 PM、森氏から烏賀陽へ返信メールが届く。


「> 小生の理解を超える部分もあります。森様が編集長在任時代は掲載していなくても、森様が在任中に企画が成立し、退任されたあとに掲載された記事もあったのではないでしょうか。


当時の週刊朝日をぜひご覧下さい。私が在任中にそうした企画はいっさい存在していません。


> 誠に僭越ながら、小生も何の根拠、証言もなしに当該の文章を書いているわけではないことはご記憶いただきたく思います。 さらにソースが複数あり、きわめて信憑性の>高い相手であれば「裏付けが取れている」と判断することは朝日の業務でも判断として>許容されていたのではないかと思います(この作業の常として、ソースの秘匿をご理解く>ださい)。


その「きわめて信憑性の高い相手」にもう一度確かめることを勧めます。何の根拠もないことがわかります。そして、「きちんと裏付けを取ってください」。当時の「週刊朝日」を調べれば簡単にわかることです。


> つまりこの場合は、小生が信じるに足ると判断した内容と、森様のご指摘と異なっているため、抗議文をそのまま掲載するのが森様にとっても、また小生にとっても公平かと考える次第です。


証言者に確かめ、「週刊朝日」をめくることがそんなに大変ですか。「誤った情報」をもとに書いた文章が、事実誤認だとわかったとき、君は訂正をしないのでしょうか。君は一人の人間に対して名誉毀損を起こしているのですよ。


> 「ワイン冷蔵庫」だったのかもしれません。
現在も過去も「ワイン冷蔵庫」なるものも持ったことがありません。


森啓次郎」


(6)2003年 7月 11日 金曜日 7:00 PM、烏賀陽から森氏にメールを返信する。


「拝復 森さま
ご意見拝読しました。調べてみますのでお時間頂戴したく存じます。それほど長くはお待たせしないつもりです。
取り急ぎ。
烏賀陽」


同時に烏賀陽は再調査を開始する。


(7)2003年 7月 11日 金曜日 10:04 PM 森氏から烏賀陽に返信メール届く。


「わかりました。
森啓次郎」

(8)2003年 7月 18日 金曜日 10:39 AM 烏賀陽が森氏へ調査を終えたことを知らせるメールを送る。

森啓次郎さま

お時間頂戴しましてありがとうございました。お待たせしたことをお詫びいたします。

さて、ご指摘により、もう一度調査をいたしました結果をお知らせいたします。

誠に残念ながら(2)(3)(4)のご指摘については、森様のご指摘そのものが錯誤に依拠していることが判明いたしましたので、訂正・削除というご要求に従うに足る信憑性は頂戴した抗議文にはないと判断せざるをえませんでした。

もう一度だけ申し上げますが、記憶をご確認いただくよう衷心よりお願い申し上げます。

といいますのは、森様のご主張と小生の主張が食い違っている以上、もし森様が「削除・訂正」というご要求を譲られないなら、ウエブで両論を併記のうえ読者の判断を仰ぐという方法しか選択肢がないからです。その場合、現在収束に向かいつつある騒ぎがまた再燃するという危惧を小生は捨て切れません。

これは、森様に意地悪をしたいなどという悪意から発したもので決してはなく、いただいた抗議文を重大に受け止めているがゆえに、森様のご指摘を公平に扱い、双方の主張について読者の判断を仰ぎたいという発意とご賢察いただきたくお願い申し上げます。一方(1)(5)の点については、ご指摘の内容を反映させ本文を修正・訂正する用意がございます。

ただ、ここからは小生の苦しい立場をご賢察願いたいのですが、(1)(5)を修正すれば森様の抗議文の存在に触れざるを得ません。そうなれば(2)(3)(4)についても言及せざるをえません。そうすると必然的に「ウエブで両論を併記のうえ読者の判断を仰ぐ」ことになります。(1)(5)のみ修正して(2)(3)(4)は無視するという選択肢は小生にはないのです。

抗議文は拝受いたし、ご趣旨も心に刻みました。小生のその認識を持ってご満足いただき、以降はご静観いただけるなら、これ以上は小生としてはなすことはありません。どうぞ賢明なるご判断のうえ、ご同意いただけるかどうかお返事くださるようお願い申し上げます。

失礼な文言お許しください。

烏賀陽拝

(9)2003年 7月 18日 金曜日 5:19 PM 森氏から烏賀陽への返信メールが届く。

そこまで言うのなら、具体的に指摘してください。
「世界のワインを訪ねて歩くシリーズ」とは、何年の何月何日号から何年の何月何日号まであったのでしょうか?
もりk

(10)2003年 7月 18日 金曜日 6:31 PM 烏賀陽から森氏への返信。

拝復 森さま


残念ながら、それを森様にご教示することは小生の責任ではありません。僭越ながら、森様ご自身の責任です。森様は、当時の編集責任者ではありませんか。


小生の書いた内容を事実誤認として削除・訂正を要求されることで、今度はご自身に発生する責任を果たされたいと願いました。それはただ単にご確認をいただくことに過ぎなかったのですが、果たされず、非常に残念です。


誠に残念ですが、現段階に至ってもこうした文面をいただくことから見て、小生の提案には賛成いただけなかったものと判断せざるをえまえん。


小生はすでに「削除・訂正せよ」「再調査せよ」というお求めに対し責任は果たしました。その結果はウエブで公表し、読者の判断を仰ぎたいと思います。


ありがとうございました。


烏賀陽拝

(10)2003年 7月 18日 金曜日 9:24 PM 森氏から烏賀陽への返信。

最初の抗議文に書いたとおり、「世界のワインを取り上げた企画」はありました。あなたが見たのはそれではありませんか?


しかし、それは、あなたの言う「世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材」ではありません。当時の編集責任者である私が「ない」と言っているのです。あなたが問題にしているのは、そのシリーズで「部員に海外取材」をさせるかわりに、「部員にお土産のワインを」買ってこさせることではないのですか。つまり、「世界のワインを訪ねて歩くシリーズ取材」がない以上、あなたが問題にしているすべての前提が崩れるわけです。

私は現在、ある大学で「出版ジャーナリズム論」を教えています。学生たちに最初に教えるのは、「よく『火のないところに煙は立たない』というが、『火のないところにも煙が立つ』のが、この世界の常識だ」ということです。

あなたが自分の間違いに気づき、自ら訂正し削除することを望んでいます。

森啓次郎

(10)2003年 7月 18日 金曜日 10:11 PM 烏賀陽から森氏への返信。

拝復 森さま


ありがとうございました。森さまがどういうご認識か確認できたました。ご丁寧にありがとうございます。


烏賀陽


******************

【補足】


 森氏は「会社の経費でワインを買ったことはない」と主張しておられます。では、一般論として、企業内の経費支出を100%立証することは可能なのでしょうか。これには社内の記録書類、つまり「ハード・エビデンス」が必要になります。

 小生の朝日新聞社在勤時の見聞でいえば、例え社内への土産を経費で買ったとしても、書類上の証拠は残さないことが慣例化していました。「編集長への土産として ワイン ××円」と書いて経費請求しても、社員同士の贈答に経費支出(会社のカネで払ってもらうこと)は認められませんから、まず最初に所属長(編集長が本来そうなのですが)が承認しませんし、例え承認しても経理担当者が認めません。

 ですから、こうした社員同士の贈答が経費でカバーされる場合、何か別の品目(例えば『取材協力者××さんへの謝礼』など)を書いて申請することが慣習化していました。所属長がこれを承知していれば、そのまま通ってしまいます。所属長がOKを出せば、経理担当者がノーということはまずありません。

 つまり経費請求者である部員と、承認者である所属長(この場合編集長)が事前に了解していれば、書類上の記録はまったく残さずにこうした経費支出をすることが可能です。


 また、経費請求者と承認者が同一である所属長の場合、どういったことが起きるかは、すでに「なぜ朝日新聞社を辞めたのか・その2」で書いておりますのでここでは繰り返しません。


 よって、例え小生が朝日新聞社の経理書類を総ざらえしても(社員でさえ難しいのに、社員でなくなった現在の小生には不可能ですが)「ワインを経費で買った」ことは証明できないでしょう。

 例えば、警察や検察が捜査で不正な金品のやりとりを証明するためには、まず裁判所の令状を取ったうえで家宅捜索をして書類(ハード・エビデンス)を集め、そこから整合性のない部分を当事者の話(ソフト・エビデンス)によって証拠付け、容疑を固めるという作業を踏みます。これは警察や検察に家宅捜索令状の請求権があるからできることであって、その権利がないメディアの「取材」という作業では不可能です。ですから、当事者の証言、つまり「ソフト・エビデンス」が強い意味を持つのです。

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