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■高裁へ提出されたミシェル●テナン氏の意見書■
テナン氏はフランス「リベラシオン」紙東京支局であり、国際NPO「国境なき記者団」(RSF)日本代表。

この日本におけるオリコン訴訟が、報道の自由という基本的人権をはなはだしく犯していることは外国報道機関の目には明らかです」

東京高等裁判所民事部判事殿
2008年9月12日

 

控訴人 烏賀陽弘道側証人
ミシェル・テナン
(住所省略)
フランス「リベラシオン」紙東京支局
国際NPO「国境なき記者団」(RSF)東京支局
 

 裁判官閣下

  この書面によりまして、日本の音楽会社オリコンとフリーランスの記者であり文筆業者である烏賀陽弘道氏の間で争われている法廷での戦いが、守るべき重要な原理原則のシンボルとして、日本に駐在する海外報道機関のみならず、ヨーロッパ(フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど)とアメリカを中心とする世界の国々の注目をいかに集めているか、裁判官閣下にお知らせできることを大変な名誉と考えております。

 裁判官閣下、私のささやかな書面を証拠として採用していただけますことにつき、まずは感謝の意を表しておきたいと思います。

 今回の訴訟は、オリコンのような大きな力を持つ大組織が、複数の弁護士を雇い、組織の後ろ盾を持たない、たった一人のフリーランスのジャーナリストに対して、小さな発行部数しか持たない専門誌に意見を表明したというだけの理由で起こしたものです。この点だけでも、まったく完全にアンフェアな訴訟と私は考えます。これは、フランスの新聞「リベラシオン」の記者として、パリに本部を置くフランスのNPO組織「国境なき記者団」の東京代表としても同様の意見を持ちます(『国境なき記者団』は1985年に設立され、世界の報道の自由と表現の自由を守るために活動する国際組織です)。

 現代の日本のような民主主義国においては、報道の自由や表現の自由は憲法で保障された基本的人権です。しかし、私が敬愛する友人である樋口陽一・東大名誉教授が私に繰り返し語ったように、こうした基本的人権は常に攻撃にさらされるため、常に守らなければいけないのです。私の祖国であるフランスでも、報道の自由を守るため行動しなければならないことは同じです。
 しかしながら、このオリコン対烏賀陽裁判のような訴訟自体が、フランスではありえません。フランスでは表現の自由はある種「神聖な権利」とさえいえます。ジャーナリストや文筆業者は企業への疑問を公に表明することができます。こうして批判された企業はジャーナリストを攻撃するのではなく、ただ単純に「反論権」(Droit de response)を行使することにより反論するのです。
 オリコンがフリーランス記者や文筆業者に提訴という形で法的争いを仕掛けたことは、海外メディアや報道の自由を守る国際組織にとっては「純粋な復讐または脅迫目的の行動」に見えます。これは明らかに公権力の濫用であり、社会正義のための行動ではありません。
 また、フランスはじめEU諸国では、ニュースソース(取材源)だけを訴え、編集部や出版社を被告から外すというオリコン裁判のような提訴のあり方はまったく考えられません。
 ゆえに、東京地裁での一審判決がいかに外国の報道機関を仰天させたか、ご想像いただけると思います。「国境なき記者団」の「2008年版世界報告書」日本の章には、オリコン訴訟が「非常に憂慮すべき事態」として記載されています。09年版では、この問題がよい方向で解決し、記述が消えるように願ってやみません。

 この日本におけるオリコン訴訟が、報道の自由という基本的人権をはなはだしく犯していることは外国報道機関の目には明らかです。その社会的イメージや名誉を守るためなら、オリコンは烏賀陽弘道氏の投げかけた疑問に、ただ単純に公的声明やプレスリリースを発表するなり、烏賀陽氏をインタビューした雑誌社に手紙を送るなりしさえすればよかったのです。この訴訟のような敵対的な方法で烏賀陽氏を攻撃することはその方法ではありません。重ねて強調しますが、言論の自由と報道の自由は日本国憲法でももっとも重要な憲法上の人権のはずです。

 オリコン社がその音楽ビジネスをどう運営しているかについて疑問を表明することは、オリコン社が主張するような「罰すべき犯罪」と見るべきではありません。同社にはいつでも、烏賀陽氏の疑問に答える権利があります。それは主にマスメディアを通じた民主主義的なマナーでなされるべきであり、5000万円という高額の金銭を烏賀陽氏に要求するなどという方法でなされるべきではありません。こうした戦略はオリコンの企業イメージを損なうだけではありません。報道の自由と表現、良心の自由が保障された安息の地・日本という国のイメージをも著しく損なうのは明らかです。

 裁判官閣下、この書簡にご興味とご関心をいただいたことを感謝します。そして私が事態を憂慮し、この書簡を執筆する決心をしたことにご理解をいただいたことにも感謝を表明したいと存じます。

 心からの真心と敬意を込めて

ミシェル・テナン(署名と捺印)
「リベラシオン」紙東京支局長
「国境なき記者団」日本代表

 





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