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■オリコン訴訟 東京地裁判決/綿引穣裁判長の判例スクラップ■

 オリコン訴訟で東京地裁判決を出した綿引穣裁判長が出した、名誉毀損訴訟の判決を新聞記事から拾ってみました。綿引夫妻(どちらも裁判官)のお人柄を取材した記事もありました。

 

●「偽メール」巡る記事、サンデー毎日にも

 永田寿康・元衆院議員が国会で取り上げた「偽メール」をめぐる「サンデー毎日」の記事で名誉を傷つけられたとして、元議員にメールを提供した男性などが、発行元の毎日新聞社に5500万円の損害賠償などを求めた裁判で、東京地裁(綿引穣裁判長)は19日、440万円を支払うよう毎日側に命じる判決を言い渡した。

 男性は同誌06年3月12日号の「『偽物メール』ネタ元と名指しされる元フリー記者の『言い分』」などの記事で、人格を非難されたり、社会的な評価を低下させられたりして精神的苦痛を受けたと主張。綿引裁判長は「記事には、いずれも男性の名誉を傷つける内容が含まれている」として、慰謝料を認めた。ただ、謝罪広告については「偽メールの真否をめぐる紛争もある程度沈静化している」として認めなかった。

 <山本隆行・サンデー毎日編集長の話> 到底承服できない。即刻控訴の手続きを進める

(2008年02月20日 朝日新聞・朝刊)

 

●地方3紙に賠償命令 配信の共同は責任なし 東京地裁

 東京女子医大病院(東京都新宿区)に所属していた医師が共同通信の配信記事を掲載した地方新聞社3社と共同通信社を相手に損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁(綿引穣裁判長)は18日、報道で名誉を傷つけられたとする医師側の主張を認め、計385万円の支払いを地方新聞社3社に命じる判決を言い渡した。共同通信社に対する請求は認めなかった。

 訴えていたのは、01年に当時12歳の女児が同病院での心臓手術後に死亡した事件で業務上過失致死罪に問われた佐藤一樹被告=一審で無罪、検察側が控訴。賠償を命じられたのは上毛新聞社(命令された額は110万円)、静岡新聞社(同165万円)、秋田魁新報社(同110万円)。

 判決は02年7月5日に各紙に掲載された配信記事について真実とは認めなかった。ただ、大学側の調査報告書などに基づいて報じたことなどを根拠に共同通信社には賠償責任がないと判断。一方で、3社に対しては、最高裁判例を踏襲して「通信社に真実と信じた相当の理由があるからといって3社にも相当の理由があることにはならない」とし、賠償を命じた。

 <江渡悦正・共同通信編集局次長の話> 通信社の配信機能を理解しない内容で、到底承服できない。

(200709月19日 朝日新聞・朝刊)

●→上の続報/掲載紙の責任、どこまで 通信社配信記事で賠償命令(Media Times)

 通信社が配信した記事に名誉棄損があったにもかかわらず、通信社の賠償責任を認めず、掲載した新聞社にのみ責任がある――とした判決が、メディアの間に波紋を広げている。「配信制度や地方紙の存立基盤を揺るがす」と、通信社や新聞社などは一斉に反発。一方で、慣例的にニュースの発信元をあいまいにしてきた日本の新聞事情を見直すべきだとの指摘も出ている。

 (石川智也)

 ○地方紙「真偽の確認難しい」

 問題となったのは、東京女子医大病院での女児死亡事故について、02年7月に共同通信社が「基本動作ミスが事故招く」「最悪の事態、なぜ?」などの見出しで配信したり、自社のホームページに掲載したりした記事。担当医が人工心肺装置の操作ミスで事故を起こしたとする内容だった。

 東京地裁は今月18日、記事内容を真実ではないとした上で、大学側の報告書や警視庁の発表から、「事実関係を誤信する相当な理由があった」として共同通信の賠償責任を否定した。一方、記事を掲載した地方紙3社については、「定評ある通信社の配信という理由だけで、記事が真実だと信じる理由があったとはいえない」と指摘。配信記事を掲載しただけの新聞社は免責されるという「配信サービスの抗弁」を認めなかった。

 地方紙は他県の事件や中央省庁の記事の多くを共同通信(職員約1700人)の記事に頼っており、共同通信は収入の8割を地方紙とNHKの計57の加盟社からの負担金で占める。地方紙側は、体制的にも配信記事の真偽を確かめようがないのが実情だ。訴訟などが起きた場合、訴訟費用の負担も含めて共同が責任を負うことになっている。

 判決後、同社はただちに「通信社の配信機能を理解しない内容で、到底承服できない」とコメント。地方紙3社は25日に控訴した。

 配信サービスの抗弁を巡っては下級審で判断が分かれていたが、いわゆる「ロス疑惑」をめぐる名誉棄損訴訟の判決で最高裁第三小法廷は02年1月、「信頼ある通信社の記事という理由だけで、掲載社の賠償責任は免れない」との判断を示した。ただ、「私人犯罪やスキャンダル報道」と分野を限定した。同3月の第二小法廷判決も配信サービスの抗弁を認めなかったが、「(これでは)新聞社は萎縮(いしゅく)して地方の出来事だけを載せざるを得なくなり、地方住民の知る権利を侵害する」との少数意見も付された。

 判例を踏襲した今回の判決を、140社と配信契約を結ぶ時事通信社も「大変残念だ」(法務室長)としている。

 「医療ミスなどの報道は通常の犯罪報道とは異なり、一段と高い公益性を持つと考えるべきだ。判決は棄損された名誉と公益性の比較考量を欠いている」。新潟日報は判決の翌々日の社説で、抗議の姿勢を鮮明にした。

 ○「配信元表示」は有名無実化

 ただ、今回の判決が注目した点に、配信元の表示(クレジット)がある。判決は、3紙が「共同」とのクレジットを付けずに自社で取材・執筆したかのようなかたちで掲載したことを踏まえ、「通信社の主張を援用できない」とした。

 02年3月の最高裁判決でも「義務づけられたクレジット表示をせず、他方で抗弁を主張するのはフェアではない」と厳しい意見が付されている。

 共同通信は定款の施行細則で「ニュースごとに『共同』のクレジットを付けなければならない」と定めている。だが、これは国内ニュースについては有名無実化しており、共同も「長年の慣行」として黙認。そもそも外電以外は配信時に「共同」と表示していない。

 今回の訴訟の原告側代理人の喜田村洋一弁護士は「これでは読者はニュース源を判断できない。引用すれば出典を記すのが責任。抗弁を認めた米国の裁判例でも、クレジットを前提としたものが多い」と話す。

 こうした指摘に対し、ある地方紙の編集幹部は「そんなことをしたら半分以上の記事にクレジットが入ることになり、煩雑きわまりない。配信制度の意味がなくなる」と主張する。

 一方、掲載紙なりの責任を再認識したとする声もある。沖縄タイムスは「自社記事と区別し、責任の所在を明確にするため」に、「共同」のクレジットを付けていたが、94年からは入れなくなった。「読者にとってはどれもタイムスの記事。対外的には自社で責任を負うべきだ」と判断したからだという。田口雅士・編集局次長は「ただ、配信記事すべての裏付け取材ができるわけではない。どういうあり方がよいのか、判決をきっかけに考えたい」と話す。

 大石泰彦・青山学院大教授(メディア法)は「新聞界の実態にそぐわない判決とは思うが、配信サービスの抗弁は、身内の論理。新聞はただの情報サービスではなく言論機関でもある。配信元を記すという読者への説明責任がこれまで緩すぎた」と指摘する。

 クレジット問題について、共同通信は「判決が不当であると主張している段階。特に見直す予定はない」としている。

 <訴訟の経緯> 東京女子医大病院で01年、心臓手術後に12歳の女児が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた医師=一審で無罪、検察側が控訴=が、記事で名誉を傷つけられたとして配信元の共同通信社と掲載した上毛新聞社、静岡新聞社、秋田魁新報社を提訴。東京地裁(綿引穣裁判長)は18日、3社に計385万円の支払いを命じる一方、共同通信の賠償責任は否定した。

 ◆キーワード

 <配信サービスの抗弁> 通信社の配信記事を新聞社が大きな変更なく掲載した場合、記事内容が明らかに真実でないと判断できた場合などを除き、記事が他人の名誉を傷つける内容であっても新聞社側は免責されるとする法理。地方紙が中心の米国では、世界的・全国的規模の事件の記事を通信社が配信するシステムは表現の自由や国民の知る権利にこたえるために有意義であるとして、新聞社を免責する裁判例が多く、定着しつつある。

(2007年9月26日 朝日新聞・朝刊)

●女優・杉田かおるさんの元夫、写真週刊誌に勝訴

  05年8月に発行された写真週刊誌「FLASH」の記事で名誉を傷つけられたとして、女優杉田かおるさんの元夫の男性と男性の経営する投資会社が発行元の光文社に計6千万円の損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は29日、計400万円の支払いと謝罪広告の掲載を同社に命じる判決を言い渡した。

 綿引穣裁判長は、杉田さんと結婚後に男性が別の女性と交際したり投資家から出資金をだまし取ったりした、などとする記載は真実とは認められないと判断した。

 光文社は「判決文が届き次第、検討して対応する」としている。

(2007年5月30日  朝日新聞 朝刊)

●日刊ゲンダイに50万円賠償命令−−東京地裁

  業務請負最大手のクリスタル(京都市左京区)が日刊ゲンダイの記事で名誉を傷つけられたとして発行元の日刊現代(東京都中央区)に5億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は27日、50万円の支払いを命じる判決を言い渡した。綿引穣(わたひきゆたか)裁判長は「記事のごく一部は真実でない」と判断した。

 問題とされたのは同紙06年1月9日号の「派遣労働者 戦慄の実態」と題した記事。クリスタルについて「『業界ナンバーワンになるには違法行為が許される』という経営姿勢を堂々と掲げている」と報じた。

(2007年3月28日 , 毎日新聞・夕刊)

スーフリ報道訴訟:メルマガ発行者らに賠償命令−−東京地裁

  早大生らのサークル「スーパーフリー」の集団性的暴行事件(03年)に関与したかのような報道で名誉を傷つけられたとして、男性会社員がメールマガジン発行者や雑誌「噂の真相」(休刊)編集人らに計990万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は7日、計605万円の支払いを命じた。綿引穣(ゆたか)裁判長は「関与を取材した事情はうかがえず、明らかに名誉を傷つけた」と述べた。

 賠償額は、メールマガジン「サイバッチ」発行者が220万円▽インターネット掲示板「2ちゃんねる」管理者が220万円▽噂の真相と編集人が165万円。2ちゃんねる管理者には書き込みの削除も命じた。【高倉友彰】

(2006年11月8日 毎日新聞・朝刊)

●読売新聞主筆の資産報道 文春の記事は違法 謝罪広告、慰謝料命じる/東京地裁

  不正な蓄財をしたかのような記事を週刊文春に掲載され名誉を傷つけられたとして、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆が発行元の文芸春秋と同誌編集長に慰謝料などを求めた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。綿引穣裁判長は、「記事は真実と信じる相当な理由がなく、許される推論の域も逸脱し、違法」と述べ、謝罪広告の掲載と慰謝料200万円の支払いを命じた。

 週刊文春は、2004年11月18日号と同月25日号で「『10億円不動産』の謎」などの見出しをつけ、渡辺主筆の資産について「収入に比べてあまりにも大きすぎるように見える」などと報じた。

 判決は、「原告が不正な蓄財をしていたとうかがわせる資料は一切見当たらない」と認定したうえで、記事が1992年以降に限定して手取り額を推計し、自宅マンションを購入できないとした点について、「92年より前の収入を無視した推測は合理的でない」と指摘した。

 また、国税当局が渡辺主筆の資産に関心を持っているとの記述についても、税務調査が行われた形跡がないことなどから、「真実であるとか、真実と信じる相当の理由があったとは認められない」と述べた。

 判決は、同様の記事が2度にわたり掲載されたことを重視し、名誉回復のために「不正な蓄財を行っているとの事実は一切存在しませんでした」「週刊文春編集部では、十分な事実の確認を怠ったため、このような記事を掲載してしまいました」「渡辺様にお詫(わ)び申し上げるとともに、今後は事実確認を徹底することを誓約します」との謝罪広告を週刊文春に掲載することが必要と判断した。

 渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆の話「ずさんな推計をもとにした事実と全く異なる記事だったことが明確にされた。不正な蓄財をしたように書かれ、新聞社の主筆として大きな被害を受けたが、裁判所が正確に理解し、賠償金に加えて謝罪広告という厳しい判決を出したことに満足している」

(2006年11月1日東京読売新聞 朝刊)

 

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[裁く]第3部・聖職の内側(4)法服脱げば「普通の人」(連載)(2001年6月1日 , 東京読売新聞)

  ◆裁判官夫婦 東京・沖縄

 那覇地裁民事二部の裁判長、綿引穣(ゆたか)(48)の朝は、妻の東京地裁民事二十五部の裁判長、万里子(46)にかける七時半の定時電話で始まる。単身赴任は任官二十年目で初めてだ。

 二人は大学の法律勉強会の先輩と後輩。万里子は「夫は『司法試験なんていつか受かる』とのんびり構えて、他人の勉強の邪魔までしていた。とても恋愛の対象ではなかった」と笑う。

 ところが一九七七年、司法試験に一緒に合格すると交際が始まり、司法修習中に結婚。万里子は裁判官になると決め、弁護士志望だった穣にも同じ道を勧めた。裁判官は全国異動が宿命で、連れ合いが弁護士だと別居は避けられない。周囲から「裁判官同士なら二十年は一緒に暮らせる」と言われ、裁判官になった。

 初任地は穣が浦和、万里子が東京だった。以後、名古屋と岐阜、横須賀と東京など、近くに配属された。現在、全国の女性判事、判事補は三百一人。全体の13・6%を占める。夫婦とも裁判官というケースも百七組ある。

   ◎   ◎

 万里子は八六年、最高裁行政局に配属された。最高裁勤務は一種の抜てきだが、激務でもある。子供二人の世話もあった。「夫は夜七時には帰って、私の作っておいた夕食を電子レンジで温めて子供に出してくれた。本当に感謝している」と万里子。穣も「彼女は疲れて九時過ぎに帰宅しても、必ず子供にバイオリンを練習させていた。夫が言うのも何だが、スーパーウーマン」とたたえる。

 家で突然、法律論争にもなる。「対立したまま不愉快な気分で寝ることもある」と万里子。穣も「子供とくつろいでいる時、突然、家内が法律解釈の話を持ち込んできたり……。変な家庭かな」と笑う。

 両親の背中を見て育った長女と長男は、今、大学の法学部に進んでいる。

   ◎   ◎

 万里子は職場でも「お母さん」的な立場にある。裁判官八人を擁する二十五部は「大合議部」と呼ばれ、通常は一人の裁判官で扱う単純な事件も、合議にする試みをしている。若手判事補の教育が目的だ。

 「証人に質問する時、不安になることもある。綿引さんの顔を見ると安心する」と打ち明けるのは、任官半年の田中伸子(26)。マスコミも注目する戦後補償裁判を「主任」として担当する任官一年の本山賢太郎(27)も、「最初は緊張で頭が真っ白になった。綿引さんから『おろおろせず、堂々と正面を向いて座っていること』と言われ、落ち着いた」と明かした。

 この戦後補償裁判は提訴から三年半。先月十八日の弁論で、万里子は八月末までに最終準備書面を出すよう求めた。原告側の弁護士らは、「これだけの人数の書面は数か月では準備できない」と訴えた。

 万里子は、「この事件は(世間から)ご批判をいただくぐらい時間をかけて、双方の主張を尽くしてきました。裁判所としては次回の弁論終結を予定して閉廷します」と宣言した。(敬称略)

    ◇

 穣判事には三日間、万里子判事には四日間の“密着取材”を試みた。二人とも、法服を脱げばごく普通の人だった。「裁判官は世間知らず」との批判があることに話が及ぶと、万里子判事は真顔でこう言った。

 「それはどんなところを指しているのでしょうか。私は魚屋で買い物もすれば、息子のPTAもくじで当たればやる。何より、裁判を通していろいろな人生を知り、いろんなことを考えているつもりなのですが」

 写真=裁判官室で訴訟記録を読む綿引穣判事(那覇地裁で)

 

[裁く]第3部・聖職の内側(3)裁判官夫婦 東京・沖縄(連載)(2001年5月31日 , 東京読売新聞)

  ◆山積み紛争 日々審理

 「閉ざされた世界にいる」「世間を知らない」との批判にさらされる裁判官。実際はどうなのか。ある裁判官夫婦の日常の仕事ぶりをルポしてみる。

    ◇

 今月十五日午前十時。那覇地裁民事二部の裁判長、綿引穣(ゆたか)(48)が、陪席裁判官二人とともに法壇に座った。

 損害賠償など八事件の口頭弁論。一件あたり三分ほどで原告席と被告席は次々に人が入れ替わる。

 事務所の入居者が、「十五坪の事務所と信じて家賃を払ってきたが、実際は十四坪だった。払い過ぎた分を返せ」と家主を訴えた事件。双方とも代理人の弁護士はついていない。

 被告の家主は高齢の女性。不慣れな裁判に戸惑っている様子だ。綿引は、「百三万円くらい払えと言われているけど、今、払う気はないでしょ」と声をかける。女性が「はい」と答えると、綿引は「じゃ、請求棄却を求める」と、法律用語に“翻訳”した。

 昼食は地裁向かいの軽食喫茶。綿引は「片方にだけ代理人がつく事件はもっと悩ましい」と打ち明けた。素手で戦う方を助けたくなることもあるが、それでは金を出して弁護士に頼んだ人がバカを見る。「アンパイアは、『打ったら一塁に走れ』と教えてもいいが、『ここはバントして』とまでは言えない。そこが難しい」

   ◎   ◎

 同じ日、綿引の妻、万里子(46)も法廷にいた。東京地裁民事二十五部の裁判長。やはり午前中に九件の弁論をこなす。

 妻が、別居中の夫に対し、妻名義の借入金などを支払うよう求めた訴訟。夫は「原告(妻)の借入金をなぜ私が支払うのか理解できない」という答弁書を提出していた。万里子はそれを読み上げた後、妻の代理人に向かって「裁判所もわかりません」と一言。夫に代理人がついていないことに配慮して、「今後は裁判所が間に入って進め方を協議させていただきます」と告げた。

 続いて、学校の電気工事部品の納入代金をめぐる訴訟。開廷前、万里子は左陪席の女性判事補、田中伸子(26)と、この訴訟のポイントについて熱のこもった議論を交わしていた。

 この日は、被告側の代表者と原告側証人が並んで尋問を受けたが、冒頭、証人が自分の住所を間違える一こまも。「緊張しておられます? 大丈夫ですよ」。万里子の一声で、表情が和んだ。

 昼食。裁判所の地下食堂で冷やし中華をすする。訴訟当事者がいることもあるので、仕事の話はしない。万里子が部総括判事(部長)になったのは四月。女性の書記官は「手際が良くて感動する。強気と思うとやんわり返したりして。かっこいいですね」と話す。

   ◎   ◎

 午後の那覇地裁。綿引穣は、夫の暴力を訴える妻が離婚を求めた裁判に臨んだ。三人の子供をそれぞれ引き取って別居中だった。

 証言席の夫は、「自分は周囲に厳しすぎた面もある」と反省を見せ、「妻を愛している」と繰り返した。

 だが、妻側の代理人の尋問を受けると、興奮して「ふざけるな、こんなくだらない裁判、いやなんだ!」と叫び、泣き出した。

 「あまり、法廷で大きな声を出さないで下さい」。綿引が穏やかに言う。

 部の部屋に帰り、陪席裁判官らにアドバイス。「離婚は訴訟に至るまでに相当の積み重ねがあるから、言いたいことが多い。両方を満足させるのは難しいよ」

多種多様な紛争と向き合った、裁判官の職場の一日が終わる。

 写真=若い裁判官を指導する綿引万里子判事(東京地裁で)

(080524)

 

 

 



 

 

 

 

 
 




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