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平成18年(ワ)第25832号損害賠償等請求事件(本訴事件)
反訴原告(被告) 烏賀陽 弘道
反訴被告(原告) オリコン株式会社
収 入 反 訴 状
印 紙
(53,000円)
2007年2月8日
東京地方裁判所 御中
反訴原告(被告)訴訟代理人
弁 護 士 釜井英法 印
弁 護 士 三上 理 印
弁 護 士 草道倫武 印
弁 護 士 松 本 はるか 印
当事者の表示 別紙当事者目録のとおり
損害賠償請求反訴事件
訴訟物の価額 金1100万円
貼用印紙額 金5万3000円
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反訴請求の趣旨
1 反訴被告は反訴原告に対し、金1100万円およびこれに対する2006年11月17日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は反訴被告の負担とする。
3 仮執行宣言。
反訴請求の原因
第1 はじめに
1 反訴被告は、月刊誌「サイゾー」(2006年4月号)に掲載された反訴原告のコメントによって、反訴被告の名誉・社会的信用を著しく毀損されたなどと主張し、反訴原告に対し、2006年11月17日、名誉毀損を理由とする損害賠償請求の訴えを提起した(本訴事件)。
本訴事件は、同誌の発行責任者である株式会社インフォバーンも、同記事につき文責がある同誌編集部も相手にせず、ひとり反訴原告のみを被告として、実に5000万円もの高額の損害賠償を請求し、さらに、謝罪広告を求めるというものである。
2 反訴被告は、反訴原告に対し、上記のような訴えを提起するに当たり、事前に、株式会社インフォバーンないし同誌編集部との間において、事実確認のための質問、反論のための情報提供を経て、訂正要求をするなどの交渉をすることは、一切なかった。
反訴被告は、このような訴えを提起した目的について、2006年12月21日、自らのホームページ「ORIGINAL CONFIDENCE」の中で、「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。…烏賀陽氏に『明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷』があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。」などと述べている。
また、J−CASTニュースの2006年12月19日付の記事によれば、反訴被告のIR担当は、反訴原告に対し5000万円もの高額の損害賠償請求をした理由について、「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」などと話している。
3 しかし、このような訴えの提起は、以下に述べるとおり、明らかに「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」ものとして、違法な行為である。
そこで、反訴原告は、反訴被告に対し、本訴事件の提訴によって生じた損害の賠償を求め、反訴を提起する。
第2 不当提訴の要件
まず、訴えの提起が相手方に対する違法な行為となるための要件(不当提訴の要件)は、次のとおりである。
1 一般的な基準
一般に、訴えの提起が相手方に対する違法な行為となるのは、「当該訴訟において提訴者の主張した権利または法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」であると解されている(最高裁第3小法廷昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁)。
2 事実的、法律的根拠を欠くことの認識
そうすると、名誉毀損を理由とする損害賠償請求訴訟において、請求原因としての名誉毀損該当性が否定され、損害の発生が認められず、または真実性・相当性等の抗弁が認められるなどの理由により、不法行為は成立しないとして請求が棄却される場合において、そのことを提訴者が知り、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに、あえて訴えを提起したなどの場合には、上記の不当提訴の要件(訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くこと)を充足し、当該訴えの提起は、違法な行為となる(東京地裁平成17年3月30日判決・判時1896号49頁を参照)。
3 攻撃ないし威嚇の手段
また、名誉毀損を理由とする損害賠償請求訴訟において、提訴者が、自らに敵対する者や批判的な者に対する攻撃ないし威嚇の手段として、訴訟を用いるという不当な意図・目的に基づき、あえて訴えを提起したなどの場合にも、やはり、上記の不当提訴の要件(訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くこと)を充足し、当該訴えの提起は、違法な行為となる(東京地裁平成13年6月29日判決・判タ1139号184頁を参照)。
第3 本訴事件の提訴の違法性
これを本件についてみると、本訴事件の提訴は、明らかに「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」ものであり、違法な行為である。
1 事実的、法律的根拠を欠くことの認識
(1) 本件記事の内容につき、本訴事件において、反訴被告が名誉毀損に該当すると主張する点は必ずしも明確でないが、おそらくは、おもに?オリコンは予約枚数もカウントに入れているという点と、?オリコンは統計手法をほとんど明らかにしないという点を指しているものと考えられる。
(2) しかし、上記?および?のコメント内容については、それ自体として、反訴被告の社会的評価を低下させるものではなく、そもそも名誉毀損該当性が否定されるというべきであるし、このコメント内容によって、反訴被告に損害が生じることもない。
上記のことを、反訴被告は知り、または通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。
(3) また、上記?のオリコンが予約枚数もカウントに入れているという点については、反訴原告が「AERA」2003年2月3日号・78頁の記事を執筆するに当たり、反訴被告の本社広報部に対し、電話取材をしたとき、対応した人物が、自ら認めていたことである。
したがって、オリコンが予約枚数もカウントに入れていることは、紛れもなく真実であるか、少なくとも、反訴被告が真実であると信じるにつき相当の理由がある(反訴原告が、ほかならぬ反訴被告の本社広報部への取材によって裏付けられたことを疑うべき理由は何もなかった)。
上記のことを、反訴被告は知り、または通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。
(4) さらに、上記?のオリコンが統計手法をほとんど明らかにしないという点については、そもそも事実の摘示ではなく、論評に過ぎないというべきであるが、この点に関し、反訴被告が「音楽ヒットチャートの集計方法の概略」を明らかにしていると主張するウェブサイトをみても、統計手法の公開は、極めて不分であることに変わりはない。
したがって、オリコンが統計手法をほとんど明らかにしていないという反訴原告の評価は、公正な論評というべきであり、その論評の前提事実にも誤りはない。
上記のことを、反訴被告は知り、または通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。
(5) そうすると、本訴事件の提訴は、反訴被告において、本件コメントにつき、名誉毀損を理由とする法行為は成立しないとして、請求が棄却されることを知り、または通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに、あえて、訴えを提起したものといわざるを得ない。
このような訴えの提起は、明らかに「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」ものとして、違法な行為である。
2 攻撃ないし威嚇の手段
(1) 本訴事件において、反訴被告は「連結売上高56億9366万円、連結経常利益5億9020万円挙げる企業」であることなどを理由に、本件コメントにより5000万円以上の損害が生じたなどと主張している。
しかし、これは何の根拠もない数字(金額)である。本件コメントにより、反訴被告に対し、そのような甚大な損害が生じることなどあり得ない。加えて、この5000万円という金額は、この種の名誉毀損を理由とする損害賠償請求訴訟において、しかも当該記事の出版社でも、執筆者ですらなく、ただ取材に応じてコメントしただけの一個人に対する請求として、およそ認容される余地のない金額であることは、わが国の裁判実務上も、顕著な事実といえる。
(2) この点、反訴被告は、2006年12月21日、自らのホームページ「ORIGINAL CONFIDENCE」の中で、本訴事件の提訴の目的について、「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。…烏賀陽氏に『明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷』があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。」などと
述べている。
また、J−CASTニュースの2006年12月19日付の記事によれば、反訴被告のIR担当は、反訴原告に対し5000万円もの高額の損害賠償請求をした理由について、「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」などと話している。
反訴被告が、上記のようなコメントをするのは、本訴事件の提訴に及んだ理由が、実は、自らに生じた損害の填補を目的とするものではなく(そもそも本件コメントにより5000万円もの損害が生じうるはずがないのである)、まさに、反訴原告に対する威嚇を目的とするものであったことを、自ら認めているに等しいというべきである。
(3) そうすると、本訴事件の提訴は、反訴原告に対する攻撃ないし威嚇の手段として、あえて、反訴原告を威嚇するに足る金額(5000万円)をもって高額訴訟を提起し、裁判制度を濫用(悪用)したものといわざるを得ない。
このような訴えの提起は、明らかに「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」ものとして、違法な行為である。
第4 本訴事件の提訴の異常さ
本訴事件の提訴は、極めて異常なものであり、万が一このような訴えの提起を許容すると、民主主義の基盤をも揺るがしかねない重大な危険を孕んでいる。
1 取材対象者の狙い打ち
(1) 本訴事件において、反訴被告が、月刊誌「サイゾー」(2006年4月号)の記事内容による名誉毀損を請求原因として主張しながら、同誌を発行した株式会社インフォバーンや、同記事の文責がある同誌編集部を相手にせず、ひとり反訴原告のみを被告として訴えを提起したことは、極めて異常なことである。
(2) この点、仮に、反訴被告が、月刊誌「サイゾー」(2006年4月号)の記事内容により、違法に名誉・信用を毀損され、損害が生じたとしても(本件では、そのような事実が認められないことは前記のとおり)、その場合に、反訴被告が損害の賠償を請求する相手として考えられるのは、まず第一に、同誌を出版した株式会社インフォバーンのはずであるし、さらに対象を広げるにしても、次に考えられるのは同記事の文責がある同誌編集部である。
にもかかわらず、本訴事件において、反訴被告は、同誌の発行につき責任がある株式会社インフォバーンも、同記事につき文責がある同誌編集部も、いずれも相手にせず、あえて、単に同誌の電話取材に応じコメントをしたに過ぎない反訴原告に対してだけ、訴えを提起した。
(3) このような訴えの提起は、あえて、出版社および執筆者と切り離して取材対象者のみを相手にすることにより、応訴の負担を集中させ、ひとり反訴原告に対して、最大限の負担を強いることを目的としたものとしか、考えられない。
2 より穏便な他の手段
(1) また、本訴事件の提訴に先立ち、反訴被告が、同誌を出版した株式会社インフォバーンや、同記事につき文責がある同誌編集部との間において、何らの交渉を経ないまま、直接、反訴原告に対し、訴えを提起したことも、通常では考えられないことである。
仮に、反訴被告が、本件記事内容につき異論があるならば、まず、同出版社ないし同編集部との間において、事実確認のための質問、反論のための情報提供などを経て、訂正要求等の交渉をすることが考えられるのであり、それがごく普通の対応である。
(2) また、反訴被告は、自ら「Original Confidence」や「oricon style」等の雑誌を発行し、ウェブサイト「ORICON STYLE」や「オリコンホームページ」等のホームページを運営している。
したがって、反訴被告が、本件記事内容につき、自ら資料の裏付けのある言論で応酬することも十分に可能であり、容易であった。
(3) にもかかわらず、反訴被告は、本訴事件の提訴に先立ち、上記のような、より穏便な他の手段をとらず、あえて、直接、反訴原告に対し、訴えを提起するという行動に出たものである。民主主義社会では、言論による批判に対しては、いきなり訴訟を提起するというのではなく、まず資料の裏付けのある言論で応酬することが求められていたというべきである。
3 表現の自由に対する萎縮的効果
(1) 今のところ、わが国において、このような訴えの提起は、この種の名誉毀損訴訟の中でも類が少ない。本訴事件の提訴は、極めて異常なものといえる。
(2) しかし、万が一、このような訴えの提起を許容し、それが一般化すると、これから、ある企業について、批判的な記事を執筆し、出版しようとする者(執筆者および出版社ら)は、取材対象者に対し、コメントを求めるに当たり、「もしかしたら、名誉毀損を理由に、あなたが訴えられるかもしれない。」ことを注意し、配慮しなければならなくなる。
そして、取材対象者らは、取材に応じ、コメントするに当たり、「もしかしたら、名誉毀損を理由に、自分が訴えられるかもしれない。」ことを覚悟しなければならなくなる。そのようなことでは、取材の自由が著しく制約されることは明らかである。
(3) その結果、言論、出版の自由を含む「表現の自由」に対する萎縮的効果を生じ、ひいては、民主主義の基盤をも揺るがすことになりかねない。
言論、出版を始めとする表現の自由が民主主義体制の存立とその健全な発展のために必要とされ、最も尊重されるべき重要な権利であることにかんがみると、本訴事件のような訴えの提起は、明らかに「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」ものというべきである。
第5 損害
本訴事件の提訴によって、反訴原告は、多大な損害を被っている。
1 慰謝料等
(1) 反訴原告は、本訴事件の提訴を受け、応訴のために多大な労力を要することとなった。ひとたび提訴されると、訴訟代理人の依頼、打ち合わせ、書面作成、期日への出頭など、応訴のために様々な活動を要し、多大な時間的、経済的負担を強いられる。反訴原告は、本訴事件の提訴を受けて、その対応のために、心ならずも、予定した仕事を諦めざるを得ない状況にも追い込まれている。
(2) 加えて、本訴事件の提訴によって、反訴原告は、「コメントの内容につき、名誉毀損訴訟を起こされたジャーナリスト」ということになり、著しく信用を害された。
これは、反訴原告のようなフリーランスのライターにとって、新たな仕事への差し支
えともなりかねない致命的な問題である。
(3) しかも、本件記事の内容は、反訴原告が自ら執筆したものではない。あくまでも、文責は「サイゾー」編集部にあり、これを出版したのは株式会社インフォバーンである。
反訴原告にとっては、まさか、単に電話での取材に応じてコメントしただけで、このような訴えを提起されることがあるとは、想像すらできなかったものである。
(4) 本訴事件の提訴によって、反訴原告が受けた精神的苦痛は、まさに甚大である。
このような反訴原告が受けた精神的苦痛、および有形無形の損害を、あえて金銭に換算すると、1000万円を下らない。
2 弁護士費用
また、反訴原告は、本訴事件において応訴を余儀なくされるとともに、その損害を回復するため、本件反訴を提起せざるを得なくなった。
これらについて、反訴原告が弁護士を依頼せず、自ら訴訟遂行することは、事実上、不可能である。
そこで、本訴事件の応訴および本件反訴のために、反訴原告が負担することとなった弁護士費用のうち、100万円は、本訴事件の提訴と相当因果関係ある損害というべきである。
第6 結論
よって、反訴原告は、反訴被告に対し、本訴事件の提訴が「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」違法な行為であることを理由として、不法行為による損害賠償請求権に基づき、金1100万円(慰謝料等1000万円および弁護士費用100万円の合計額)、並びにこれに対する不法行為の日(2006年11月17日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
以 上
証 拠 方 法
口頭弁論において、必要に応じ提出する。
添 付 書 類
反訴状副本 1通
当 事 者 目 録
〒144−■■■■
東京都大田区蒲田本町■■■■■■■■■■■■■■
反訴原告(被告) 烏賀陽 弘 道
(送達場所)
〒171−0014
東京都豊島区池袋2−55−13合田ビル2F
電 話 03−5951−6077
FAX 03−5951−6944
池袋市民法律事務所
反訴原告(被告)訴訟代理人
弁 護 士 釜 井 英 法
〒104−0061
東京都中央区銀座6−12−15西山ビル7F
東京市民法律事務所
反訴原告(被告)訴訟代理人
弁 護 士 三 上 理
〒150−0002
東京都渋谷区渋谷3−10−13渋谷Rサンケイビル8F
弁護士法人渋谷シビック法律事務所
反訴原告(被告)訴訟代理人
弁 護 士 草 道 倫 武
弁 護 士 松 本 はるか
〒106−0032
東京都港区六本木6−8−10STEP六本木西3F
反訴被告(原告) オリコン株式会社
代表者代表取締役 小 池 恒
(送達場所)
〒100−6312
東京都千代田区丸の内2−4−1丸ビル12階1201区
反訴被告(原告)訴訟代理人
弁 護 士 笹 浪 雅 義
弁 護 士 中 島 秀 二
弁 護 士 高 村 健 一 ほか
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